JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG49] [JJ] 地球惑星科学における航空機観測利用の推進

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 304 (国際会議場 3F)

コンビーナ:高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、鈴木 力英(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野)、町田 敏暢(国立環境研究所)、座長:高橋 暢宏(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

14:30 〜 14:45

[ACG49-04] UAVによる課題解決型リモートセンシングの推進

★招待講演

*近藤 昭彦1濱 侃2田中 圭3 (1.千葉大学環境リモートセンシング研究センター、2.千葉大学大学院理学研究科、3.日本地図センター)

キーワード:UAV、UAVリモートセンシング、作物モニタリング、生態系モニタリング、地表面温度モニタリング、空間線量率モニタリング

1960年代に始まった人工衛星による地球観測時代は、その後の衛星および観測技術の進歩とともに、様々な分野における課題解決に対する役割を期待されるようになった。現在では人工衛星リモートセンシングは天気予報や農業等の分野で活用されているものの、投入コストに見合う成果を出すことは、研究者に課せられた課題である。その一つとして、トータルシステムとしてのリモートセンシングがあり、人工衛星だけでなく様々なプラットフォームを組み合わせ、それぞれの利点・欠点をカバーしながら、リモートセンシングを実現していく方向性が考えられる。その実現のためにUAV(Unmanned Aerial Vechile)を利用したリモートセンシングがある。
UAVには様々な機体があるが、ここでは最近機能の充実が著しいラジコン電動マルチコプターを取り上げ、その応用事例を紹介する。UAVの利用により、人工衛星リモートセンシングの欠点であった長い回帰日数、雲による被覆、といった問題を一定程度回避でき、人工衛星では達成できなかった新たな応用、低コストの運用を実現できる可能性がある。特に課題を持つステークホルダーとリモートセンシング技術者、研究者の接続を促し、協働による課題解決を実現するツールとして活用できると考えられる。
UAVとしてローターを複数持つマルチコプターは、姿勢の安定性、操作の容易さ、コスト等の要件からよく利用されており、ドローンと通称されている。市販の製品ではDJI社(中国)の機体がよく使われているが、最初のドローンは日本のキーエンス社の製品であったと思われる。今後、日本としても応用分野では先を進みたい。
UAVの応用分野として最も活用されているのは測量分野であろう。UAVで撮影した鉛直写真からSfM-MVS技術によりオルソ空中写真、3Dモデルを作成する技術は、公共測量、災害、等の分野で活用されている。筆者等のグループも測量用途の活用を推進するとともに、UAVリモートセンシングとしてカメラ、センサーを搭載し、様々な課題に取り組んできた。今回紹介する課題は、①作物の生育診断、②生態系モニタリング、③地表面温度の計測、④空間線量率計測、⑤その他、である。これらの課題においてUAVにはカメラおよびセンサーを搭載するが、カメラとしてi)可視カメラ、ii)近赤外カメラ、iii)熱赤外カメラ、iv)ハイパースペクトルカメラ、を使用している。センサーとしては温湿度、空間線量率を計測するセンサーを搭載した。

①作物の生育診断
可視・近赤外カメラをUAVに搭載することにより、群落高の分布、NDVI等の植生指標の計測ができ、それらの指標を用いて作物の生育診断ができる。UAVを用いることにより比較的狭い領域であるが、時間分解能が高い画像情報を得ることができ、衛星では困難であった連続的なフェノロジー情報を得ることができるため、作物だけでなく、フラックス研究等への応用も可能だろう。

②生態系モニタリング
UAVで取得した可視画像から外来植物の分布と生育をモニターした結果を報告する。オルソ画像が作成できるため、GIS上で生育や駆除の状況を地図化し、解析することができる。今回は水草のナガエツルノゲイトウの例を紹介するが、研究だけではなく地域、行政との協働による駆除を支援する情報として活用できた。

③地表面温度の計測
市販の熱赤外カメラをUAVに搭載することにより、地表面温度を計測することができる。その応用範囲には説明の要はないと思われるが、ここでは夏の水田の表面温度とNDVIを組み合わせて、蒸散速度の日変化に関する情報を得た事例を紹介する。

④空間線量率計測
UAVにセンサーを搭載すれば、計測物理量の3次元分布を得ることができる。ここではUAVにガンマ線スペクトロメーターを搭載し、センサー位置における空間線量率から地上1m高の空間線量率マップを作成した事例を紹介する。

UAVは研究者の計測に関する夢を実現するすばらしいツールである。持続的な活用を進めるためには、関連法規を遵守し、安全運用を心がけるとともに、研究者とステークホルダーの接続を促し、社会のツールとして活用できる成果を出す必要があろう。
UAVリモートセンシングのコンセプトはほぼ確立したと考えられるため、人工衛星リモートセンシングと組み合わせたトータルパッケージとしての活用法の構築が今後の課題である。