JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG50] [JJ] 沿岸海洋生態系──2.サンゴ礁・藻場・マングローブ

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 301A (国際会議場 3F)

コンビーナ:宮島 利宏(東京大学 大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 生元素動態分野)、梅澤 有(長崎大学)、渡邉 敦(東京工業大学 環境・社会理工学院)、座長:宮島 利宏(東京大学 大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 生元素動態分野)、座長:渡邉 敦(東京工業大学)

15:00 〜 15:15

[ACG50-05] 鉱物と掛り合う沿岸海洋バイオマスによるサンゴ礁回復

*市川 和彦1 (1.(前)地球環境科学院、北海道大学)

キーワード:鉱物、沿岸海洋、サンゴ礁、回復能、バイオマス

大気二酸化炭素が溶け込んだ表層海水に鉱物・バイオマスは溶解する。酸・塩基解離の可逆的化学反応のメカニズムは石灰化を行う生き物の個体の発育、それらの群体への発展途上には不可欠である。しかし生物と無関係に当反応は海水中で起きる。表層海水の正体は、当反応に関わる各溶存イオン種の化学ポテンシャルの高低によって評価されるからである。大気二酸化炭素に対して開放系にも拘わらずその浅瀬海域は弱塩基を保持・維持している。尚大気下の淡水は酸性(pH < ~7 )である。酸・塩基滴定実験を通して可逆的石灰化反応
Ca2+ + HCO3- ⇋ CaCO3 + H+
を10年前に偶然発見した。塩濃度(Salinity)によって石灰化反応メカニズムは異なる。海水中では上記の酸解離反応で、淡水では溶解・析出の物理反応Ca2+ + CO32- ⇋ CaCO3である。石灰化・脱石灰化の可逆的反応は酸解離反応でプロトン生成・プロトン消費の可逆反応でもある。表層海水の本性は、弱塩基範囲内に制御されたプロトン濃度のホメオスタシス(恒常性)機能を備えていることにある。しかし、人間活動による大気二酸化炭素濃度増加による海洋酸性化は鉱物溶解をもたらす。
石灰化化学反応の溶解度積 [Ca2+][HCO3-]は[H+]増加(pH降下)と共に増すので正味の石灰化速度は減少する。よって表層海洋の酸性化は当速度を減少させる。正味の石灰化速度は、海水中ではカルシウムイオンとHCO3- との溶解度積に反比例するので[Ca2+]のpH依存性を評価しなければならない。尚 [HCO3-]のpH依存性は小さい。正味の石灰化速度の検討は、 [Ca2+]のpH依存性の評価が不可欠であって水溶性炭酸塩化学の立場のみでは不充分である。カルシウムイオン濃度の供給源は、鉱物やバイオマスの海洋への溶出から期待される。サンゴ礁の生物多様性維持は重要であって、人間活動によるPCO2増加のみならず沿岸、サンゴ礁の魚類・貝類の漁獲量制限を検討しなければならない。              (K. I.: ichikawa@ees.hokudai.ac.jp)
キーワード:鉱物、沿岸海洋、サンゴ礁、回復能、バイオマス