JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG50] [JJ] 沿岸海洋生態系──2.サンゴ礁・藻場・マングローブ

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 301A (国際会議場 3F)

コンビーナ:宮島 利宏(東京大学 大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 生元素動態分野)、梅澤 有(長崎大学)、渡邉 敦(東京工業大学 環境・社会理工学院)、座長:田中 義幸(八戸工業大学 基礎教育研究センター)、座長:梅澤 有(長崎大学)

16:05 〜 16:20

[ACG50-08] 西表島崎山湾におけるサンゴ分布の底面流速と土粒子量との関係

*下川 信也1河野 裕美2村上 智一1宮内 星七2鈴木 舞弓2水谷 晃2 (1.防災科学技術研究所、2.東海大学)

キーワード:造礁サンゴ、流速、土粒子、西表島、崎山湾・網取湾自然環境保全地域

西表島崎山湾におけるサンゴ分布と物理環境との関係を明らかにすることを目的として,調査研究を実施した.まず,湾内72地点における群体形状別サンゴ被度分布と群集タイプ別サンゴ分布域の現地調査を行い,次に,湾域の夏季と冬季の平均的な気象場における数値シミュレーションによる海洋流速場と土粒子数分布の計算結果を解析し,現地調査で得られたサンゴ分布と比較した.

崎山湾では,卓状,葉状,被覆状サンゴは礁縁に,枝状サンゴは礁縁と湾口部に,塊状サンゴは湾口部から湾央部に,主に分布していた.サンゴの群体形状別の出現地点数と平均被度は,枝状サンゴが41地点において39%,卓状サンゴは28地点において15%,塊状サンゴは47地点において7%,葉状サンゴは19地点において6%,被覆状サンゴは25地点において7%であった.

崎山湾では,7か所の枝状サンゴ群集と4か所の卓状サンゴ群集が確認された.枝状サンゴ群集中のサンゴの枝の生きているところから頂点までの長さと根元の幅の平均値を元に,枝状サンゴ群集を長い枝状,短い枝状,短く細い枝状に分類した.長い枝状,短い枝状,短く細い枝状,卓状サンゴ群集の主な分布場所・群集数・面積は,それぞれ礁縁からやや湾内側に入った湾口部・2群集・16ha,波あたりの強いリーフ上・4群集・11ha,湾央部東岸寄りの直径約200mで水深13mの礁池を取り囲むように存在・1群集・2ha,最も波あたりの強いリーフ上・4群集・4haであった.また,湾央部から湾奥部にかけては,水深約1.2m程度以下の非常に平坦な海底地形となっており,その領域では,ウミショウブが広く分布していた.

群体形状を区別しない全サンゴ被度分布は、おおまかに湾口部から湾央部で30%以上,湾央部から湾奥部にかけてのウミショウブ分布域で30%未満,湾の最奥部で0%であった.そこで,調査地点を,サンゴ被度が0%,1%-30%,30%以上の地点に分類し,物理環境(底面流速と土粒子数)との対応関係を見た.

底面流速は,季節によらず,卓状,短枝状,短細枝状,長枝状の順に大きく,またサンゴ被度30%以上,1-30%,0%の地点の順に大きく,特に冬季の底面流速は,被度30%以上の地点では,被度0%の地点の約2倍程度あることがわかった.また,土粒子数は,季節によらず,また粒径によらず,被度0%の地点で極端に多く,サンゴが生息する地点では,被度1%-30%の地点の方が30%以上の地点より多いことがわかった.

結果をまとめると,以下のようになる.1) サンゴ生育場所の底面流速が大きいほど,サンゴ被度が高い.また,群集タイプにより,底面流速が異なる.2) サンゴ生育場所の土粒子数が多いほど,サンゴ被度が低い.また,土粒子数が多い場所では,主としてウミショウブが生育している.

参考文献:
村上智一・鵜飼亮行・河野裕美・水谷晃・下川信也・中瀬浩太・野口幸太・安田孝志,2012,西表島網取湾の造礁サンゴの分布とその物理環境の関係,土木学会論文集B3(海洋開発),68,I_1133-I_1138.
Shimokawa, S., T. Murakami, A. Ukai, H. Kohno, A. Mizutani and K. Nakase (2014b): Relationship between coral distributions and physical variables in Amitori Bay, Iriomote Island, Japan, J. Geophys. Res.: Oceans, 119, 8336-8356 (doi: 10.1002/2014JC010307).
下川信也・河野裕美・村上智一・水谷晃・柴山拓実・山本結子・鵜飼亮行・中瀬浩太,2015,西表島網取湾における塊状サンゴの分布と物理環境の関係,土木学会論文集B3(海洋開発),71,969-974.
下川信也・河野裕美・村上智一・宮内星七・鈴木舞弓・水谷晃,2016,西表島崎山湾における造礁サンゴの分布とその物理環境との関係,土木学会論文集B2(海岸工学),72,1435-1440.