JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG50] [JJ] 沿岸海洋生態系──2.サンゴ礁・藻場・マングローブ

2017年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:宮島 利宏(東京大学 大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 生元素動態分野)、梅澤 有(長崎大学)、渡邉 敦(東京工業大学 環境・社会理工学院)

[ACG50-P02] 現場チャンバー実験によるサンゴ礁一次生産者の光合成、石灰化および有機炭素・窒素フラックスの測定

*渡邉 敦1中村 隆志1中野 義勝2灘岡 和夫1 (1.東京工業大学 環境・社会理工学院、2.琉球大学 熱帯生物圏研究センター)

キーワード:サンゴ礁、一次生産者、光合成、石灰化、チャンバー実験

サンゴ礁の主要一次生産者の光合成、石灰化、および有機炭素・窒素フラックスを現場チャンバー実験により測定した。主要一次生産者として2種の造礁サンゴ(Acropora pulchraPorites cylindrica)、海草藻場、大型藻類(Sargassum sp.)、砂地の5つを選び、沖縄県石垣島の白保サンゴ礁で実験を実施した。実験は2012年7-8月(2種のサンゴおよび砂地)および10月(海草藻場および大型藻類)に、各群集を対象に24時間(2時間×12回)実施した。光合成および石灰化速度は採水した炭酸系(全アルカリ度および全炭酸)の分析とチャンバー内にてセンサーを使用して1分間隔で測定したpH-DOデータを用いて算出した。採水試料の全有機炭素(TOC)、全窒素(TN)および栄養塩(NH4+, NO3-, NO2-)分析から有機炭素、窒素フラックスを算出した。
日中の光合成速度は砂地を含め、光合成有効放射(PAR)に応答し変化した。暗呼吸は日没直後に最大となり、その後夜間に減少した。この傾向はチャンバー内水温の減少と対応していた。日中の石灰化速度は2種のサンゴでPARに明瞭に応答し、また砂地および大型藻類はやや正の石灰化速度を示したが、海草藻場は負の値を示し炭酸塩の溶解を示した。夜間においてはサンゴ2種の石灰化速度はpHの減少とともに減少傾向を示し、夜間の石灰化速度はA. pulchraの方がP. cylindricaより有意に高かった。砂地ではpHが8.1を下回ると溶解が確認され、海草藻場では砂地より大きな溶解がpHによらず確認された。これは海草藻場では、海草由来の有機物の分解により炭酸塩の溶解が促進されていることを示唆する。
有機物フラックスに関しては、A. pulchraは日中に夜間と比べて大きなTOC放出速度が確認された。海草藻場および大型藻類は昼夜を問わずTOCを放出しており、その放出速度はサンゴ2種より大きかった。有機窒素の放出速度も海草藻場や大型藻類でサンゴ2種より大きな値を示した。これらの観測結果は、海草藻場や大型藻類が隣接する群集に対して重要な有機炭素・窒素供給源になっていることを示唆している。