JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG51] [JJ] 沿岸海洋生態系──1.水循環と陸海相互作用

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小路 淳(広島大学大学院生物圏科学研究科)、杉本 亮(福井県立大学海洋生物資源学部)、山田 誠(総合地球環境学研究所)、藤井 賢彦(北海道大学大学院地球環境科学研究院)

[ACG51-P04] 瀬戸内海中央部の海底湧水域におけるカレイ類を中心とした魚類の出現

*小路 淳1杉本 亮2本田 尚美3谷口 真人3 (1.広島大学大学院生物圏科学研究科、2.福井県立大学、3.総合地球環境学研究所)

キーワード:水―食料ネクサス、水産資源、海底湧水、カレイ、瀬戸内海、広島

陸水の流入は豊富な栄養を供給することを通じて,沿岸域の生物生産や生物多様性を高めると認識されている.これまでの研究は,陸水のうち河川水を対象としたものがほとんどであり,海底湧水を対象とした事例は少ない. 海底湧水は河川水に比べて栄養に富み,水温が年間を通じて比較的安定しているという特性を備える.海底湧水による植物プランクトン等の基礎生産への影響についての報告事例は世界各地で増えつつあるが,魚類などの高次捕食者に対する影響を評価した事例はほとんど存在しない.本発表では,瀬戸内海中央部(広島県竹原市)で確認された海底湧水の周辺域における食物網を明らかにすることを目的として,その基礎情報となる魚類の出現動態について,優占種であるカレイ類を主な対象として調査を実施した.
2013~2016年の3月~7月の間に,広島県竹原市賀茂川河口沖に形成される干潟において野外調査を行った.事前調査により海底湧水の存在を確認したエリアを中心に,河口沖約50 mから沖に向かって50 mおきに6本の調査ラインを設け,小型押し網(網口 0.1x10.3m,網目3 mm)による魚類採集を実施した.食性解析のために手網による魚類採集を併せて行った.餌料生物環境調査のために,魚類採集と同じ地点において方形ネット(網口 0.4x0.3 m,網目0.3 mm)を30m曳網した.ネット山形県遊佐町,福井県小浜市,広島県竹原市において野外調査を実施した.生物採集に加えて水温,塩分の測定を各ラインで実施した.
海底湧水の噴出量が多いエリアでは,マコガレイ,イシガレイ,メイタガレイ,ホシガレイ,ヒラメなどの異体類が優占種として出現した.これらの魚類の主要な餌料生物は,ヨコエビ類,クーマ類,カイアシ類などの甲殻類と多毛類であった.安定同位体比分析の結果,これら魚類の一部が海底湧水を通じて陸域起源の栄養を利用していることが示唆された.とくに,底生甲殻類への依存度が高かったマコガレイでは,全長40 mm以降の時期に陸起源栄養物質への依存度が高まることが示唆された.