JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG52] [JJ] 植物プランクトン増殖に関わる海洋-大気間の生物地球化学

2017年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 304 (国際会議場 3F)

コンビーナ:西岡 純(北海道大学低温科学研究所)、鈴木 光次(北海道大学)、宮崎 雄三(北海道大学低温科学研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、座長:宮崎 雄三(北海道大学低温科学研究所)、座長:谷本 浩志(国立環境研究所)

11:45 〜 12:00

[ACG52-11] 春季の北部北太平洋における海洋エアロゾルの粒径分布および雲凝結核活性

*川名 華織1,2持田 陸宏1宮崎 雄三3鏡味 沙良1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.東京大学大学院総合文化研究科、3.北海道大学低温科学研究所)

大気中のエアロゾルは太陽放射を吸収・散乱する事によって直接的に、また雲凝結核(CCN)として作用し雲形成に関与することによって間接的に気候に影響する。雲の形成を通じたエアロゾルの放射影響の見積もりは不確定性が高く、大気エアロゾルに含まれるCCNの特徴の解明は、全球の気候を考える上で重要である。海洋域におけるエアロゾルの発生源としては、海水の飛沫としての一次放出や揮発性気体に由来する二次生成が考えられる。春季には海洋生物活動の活発化にともなう海洋生物起源有機物を含む一次・二次粒子の生成放出がエアロゾルやCCNの数濃度の特徴に関与している可能性がある。本研究では、春季の北部北太平洋において大気エアロゾルの船舶観測を行い、大気エアロゾルの数濃度と粒径分布、CCNの数濃度とその活性度を調べた。

大気観測は2015年3月6日から26日までの21日間、研究船白鳳丸で実施された。甲板に設置されたサイクロン(50%カットオフ径:2.5 マイクロメートル)を通じてエアロゾル粒子を研究室内の測定装置に取り込み、走査式モビリティパーティクルサイザを用いて5分ごとにエアロゾル粒径分布を測定した。また、走査式モビリティCCN分析システムを用い、20分ごとに3つの過飽和度(0.1%, 0.2%, 0.6% SS)を切り替えて、1時間ごとに3つの過飽和度における粒径別のエアロゾル粒子数に占めるCCNの個数割合(CCN効率スペクトル)を測定した。

エアロゾルの個数粒径分布は平均的に二山分布を示し、その特徴から、観測されたエアロゾルは粒子個数濃度が低く累積モード(粒径100 nm以上)に極大をもつもの、粒子個数濃度が高くエイトケンモード(粒径100 nm以下)に極大をもつもの、エイトケン・累積モード共に極大をもつものに分類された。後方流跡線解析による空気塊の経路の解析により、清浄な海洋エアロゾルの存在に加えて、陸域からの輸送が粒径分布に影響している可能性が示された。CCN効率スペクトルから算出された吸湿性パラメータは、無機塩を豊富に含む清浄な海洋大気エアロゾルの文献値よりも低く、陸域より流入した、あるいは海洋からの有機物の存在がエアロゾル粒子のCCN活性を低下させた可能性が示唆された。一方、エアロゾル粒子およびCCNの数濃度は、清浄な海洋大気エアロゾルの文献値よりも高い期間が多い。これらのデータは、今後、CCN数濃度に対する生物起源有機物の寄与や、この濃度に対する物理的因子(粒径分布、個数濃度)・化学的因子(化学組成、吸湿性)の寄与を調べる上で役立つと期待される。