JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG53] [JJ] 気候変動への適応とその社会実装

2017年5月20日(土) 10:45 〜 12:15 104 (国際会議場 1F)

コンビーナ:石川 洋一(海洋研究開発機構)、渡邉 真吾(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、大楽 浩司(防災科学技術研究所)、座長:石川 洋一(海洋研究開発機構)

11:00 〜 11:15

[ACG53-08] 領域気候d4PDFモデルにおける日本列島陸域夏季地上気温の将来変化

*岡田 靖子1石井 正好2遠藤 洋和2川瀬 宏明2高薮 出2佐々木 秀孝2渡辺 真吾1藤田 実季子1杉本 志織1川添 祥1 (1.海洋研究開発機構、2.気象研究所)

キーワード:地球温暖化、異常高温

近年,異常気象と呼ばれるような事象が頻発し我々の生活に甚大な被害を及ぼしている.地球温暖化の進行に伴う気候変化とこのような異常気象との関係に対する関心は高まる一方である.これまで地球温暖化予測計算による様々な解析が実施されているが,アンサンブル数が少ないため,自然変動,すなわち低頻度事象である異常天候や極端気象に伴う不確実性を十分に評価することができなかった.このような問題意識から,高解像度全球大気モデルおよび高解像度領域大気モデルを用いて多数(最大100メンバー)のアンサンブル実験が実施され,「地球温暖化対策に資する気候予測データベース(d4PDF)」が作成された(Mizuta et al. 2016).領域大気モデルは格子間隔20kmである.将来実験は,産業革命以前より全球気温が4℃昇温した場合を想定しており,CMIP5の6種SST将来変化の空間パターンを与えている.本研究では,d4PDF領域大気モデルの出力結果を用いて,日本域の夏季の地上気温を地点別に評価した.
本研究では領域気候d4PDFモデルの地上気温データを使用する.使用したメンバー数は,過去実験(1951~2011年)を50メンバー,将来4℃昇温実験(2051~2111年)を6種SST×15メンバーである.また地点ごとの観測データとして全国152地点の気象官署のデータを使用する.
地点別の地上気温を再現するには粗い格子間隔20kmの本モデルでは,そのバイアスは地点によって無視できない大きさを持つ.そこで,観測値と過去実験の格子点の値を線形関係と仮定して最小二乗法を用いるバイアス補正方法(Piani et al. 2010)で補正を行った.非常に単純な補正方法ではあるものの,この方法ではすべての地点で十分に誤差を軽減することができた.また,4℃昇温実験については観測値と過去実験の比較から求めた補正係数を適用する.
バイアス補正を実施したモデル出力値の夏季の日平均気温,日最高気温および日最低気温は,どの地点もよりよく改善された.一方で,真夏日日数などはわずかだが過大評価される地点が生じる.たとえば,東京の真夏日は観測値よりわずかに増加を示す.これはモデル出力値が観測値と異なり,海の影響を受けていないためと考えられる.しかし,この差は有意ではない.過去実験同様に補正を施した4℃昇温した将来では,真夏日の日数は過去実験と比べどの地点も5倍程度増加した.この値はSSTの違いにより大きなばらつきを持つ.そしてこの傾向は夏季が最も大きい.
SI-CATでは,4℃昇温した将来実験と同様に2℃昇温した近未来を想定した実験を実施している.現在出力されているデータを用いて,4℃昇温実験と同様に各地点の将来変化を確認した.2℃昇温した近未来では,真夏日の日数は過去実験に比べどの地点も2倍程度の増加がみられる.そして+2℃の近未来の気候が,過去の気候と+4℃の将来の気候のほぼ中間に位置していることを確認した.
本研究は,文部科学省委託事業気候変動適応技術社会実装プログラムのもとで行われた.