JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG53] [JJ] 気候変動への適応とその社会実装

2017年5月20日(土) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:石川 洋一(海洋研究開発機構)、渡邉 真吾(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、大楽 浩司(防災科学技術研究所)

[ACG53-P05] 大規模アンサンブル気候予測実験d4PDFに基づく韓国の東南沿岸における高潮偏差の長期評価

*梁 靖雅1金 洙列2森 信人3 (1.京都大学大学院、2.鳥取大学大学院、3.京都大学防災研究所)

キーワード:高潮、気候変動、大規模アンサンブル気候予測実験、d4PDF

【緒論】
韓国は1904年から2013年まで年間約3個の台風によって直接的・間接的に台風の影響を受けており、過去台風による高潮災害で沿岸域にて大きな被害が何度もあった。現在、地球温暖化による気候変動に伴って台風強度の増大が予想されており(Knutsonら, 2010; Moriら、2010) 、その影響で韓国の沿岸部における高潮による長期的な変化と災害の発生が懸念される。
気候変動リスク情報創生プログラムにより、水平解像度約60kmの全球大気モデル(MRI-AGCM3.2)を用い、これまでにない最大100メンバのアンサンブル実験を行い「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース、database for Policy Decision making for Future climate change (d4PDF)」が作成された。この実験は過去実験(1951~2011)、非温暖化実験(1951~2010)、4℃上昇実験(2050~2111)の3種類に構成され、今まで評価の難しかった数十年に一度以下の極低頻度の台風や高潮の長期評価が可能になった。
本研究ではd4PDFの結果から得られた台風データから、韓国に影響を及ぼす台風の再現性と将来変化を検討した。さらに、その台風データを駆動力として、気候変動に伴う高潮偏差の長期評価を行った。

【研究方法】
本研究では韓国に影響を及ぼす台風として、32°~ 40°N、122°~132°Eの領域を通過した台風を研究対象とした。d4PDFの台風データにおける韓国に影響を及ぼす台風の再現性と将来変化を評価するため、d4PDFの台風データのうち、研究対象となる台風を抽出した。研究対象となる台風数とそれらの台風の強度特性について再現性を評価するため、過去実験の台風データ(d4PDF-past)と該当期間のIBTrACSの観測データ(IBTrACS)を比較した。台風の将来変化の把握にはd4PDF-pastと4℃上昇実験の台風データ(d4PDF-future)を用いた。これらの台風をもとに、非線形長は方程式を用いた高潮のネスティング計算を行い、高潮の長期変化を検討した。ネスティングは4ドメインで行い、最小解像度は760mである。その後、台風ごとの最大高潮偏差の計算結果を極大値資料として極値統計解析を行い、再現期間R年の高潮偏差、気候変動による再現確率値の変化量を検討した。極値分布関数としてGumbel分布を当てはめ、プロッティング・ポジション公式にはGringorten公式を適用した。再現期間は、25年、50年および100年とした。

【結果】
韓国に影響を及ぼす台風数については、d4PDF-pastで6,475個(メンバ平均65個)、d4PDF-futureでは3,642個(メンバ平均41個)と 約半分となる将来変化が見られる。一方、IBTrACSの台風数は182個である。d4PDFのアンサンブルメンバの多さから十分な台風サンプルを確保することができた。
台風の中心気圧については、d4PDF-pastの最低中心気圧の平均値は971.4hPa、d4PDF-futureの平均値は963.2hPaであり、将来には 今までより強い台風が通過する可能性が高く予想される。しかし、IBTrACSの平均値は981.7hPaで、d4PDF-pastはIBTrACSより約10hPa過小評価されており、そのバイアスを補正してから、高潮計算に用いた。韓国の東南沿岸部における気候変動による将来の高潮偏差は、台風の強大化につれ一様に増加するのではなく、地域依存性があることが分かった。