JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW35] [EJ] 同位体水文学 2017

2017年5月20日(土) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:安原 正也(立正大学地球環境科学部)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)、大沢 信二(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設(別府))

[AHW35-P02] Seasonal variation of 17O-excess of precipitation in East Asian Monsoon region, Okinawa, Japan

*上地 佑衣菜1植村 立1 (1.琉球大学理)

キーワード:17O-excess, the triple isotopic composition, precipitation

近年、水の水素と酸素18の同位体比 (δDとδ18O) に加えて、酸素17(δ17O)の高精度測定が可能になった。水循環のトレーサーとして、δ18Oとδ17Oを組み合わせた17O-excessという指標が提案された (Barkan and Luz, 2005) 。17O-excessは、海洋上の蒸発における分子拡散により生じると考えられ、d-excessと組み合わせることによって新たな情報を持つ指標として期待できる。
17O-excessの変動メカニズムは基本的にd-excess (= δD – 8 × δ18O) と同様である。実際に、海洋上の水蒸気の17O-excessとd-excessには正の相関関係がある (Uemura et al., 2010) 。しかし、南極のアイスコア (Landais et al., 2008) と雪 (Touzeau et al., 2016)、アメリカ大陸の地下水 (Li et al., 2012) では、17O-excessとd-excessの相関関係が低く、雪結晶成長や水蒸気循環の影響が指摘されている。また、アフリカモンスーン降水イベントの17O-excessが対流活動における再蒸発の影響が示唆されている(Landais et al., 2010) 。本研究では、アジアモンスーン地域における17O-excess変動を明らかにするために、沖縄島での降水の測定を行った。
試料は、沖縄県南部(沖縄県環境衛生研究所)において、1週間ごとに2年間、採取した降水を用いた。同位体分析にはキャビティーリングダウン式分光計(L2140-i, Picarro)を用いた。降水の17O-excessは夏に低く冬に高い値をとる季節変動がみられた。これは、d-excessの季節変動 (Uemura et al., 2012) と同様であり、水蒸気起源の相対湿度を反映していると考えられる。また、17O-excessとd-excessには強い正の相関関係がみられた。この結果は沖縄島の降水が海洋での蒸発時の分子拡散の情報を保存している事を示唆している。