[AHW35-P04] マングローブ林からの水系を介した炭素流失の評価:溶存炭酸の濃度および炭素同位体比による解析
★招待講演
キーワード:炭素循環、マングローブ生態系、DIC、炭素安定同位体
マングローブ林は、森林生態系の中で最も炭素貯留量が大きく (Donato et al. 2011)、特異的に高いCO2吸収能を持つため(Rivera-Monroy et al. 2013)、近年、温暖化問題を背景にその機能に注目が集まっている。高いCO2吸収能は、熱帯環境での高い純一次生産量と、冠水による低い分解呼吸量により説明されているが、炭素収支について未解明な部分が多く、CO2吸収の報告には大きな誤差がある。本研究では、従来の方法では定量されてこなかったマングローブ生態系からの水系を通じた炭素流出に着目し、土壌中の地下水に形成される溶存無機炭素(DIC)プールと潮汐による地下水移動に伴うDICの流出にについて、炭素同位体を用いた解析を実施した。生態学的な調査が実施されている沖縄県石垣島吹通川のマングローブ林の河口域において、2017年8月に河口からマングローブ林内の河川の4地点にて1時間毎に河川水を採取し、pH、塩分、DIC濃度および炭素同位体比を測定した。これらは、潮位変動に伴った変化を示し、特に、干潮時に高いDIC濃度が示された。その濃度は、上流の河川水や付近の海水を上回っており、マングローブ林からのDIC供給が示唆されるものであった。このとき、DICの炭素同位体比の変動は、マングローブ林下流の河口では0.37~-10.33‰、マングローブ林周辺では-1.97~-13.87‰であり、海水起源のDICよりも明らかに低い値であった。このことは、マングローブ林地下における有機物分解に由来する炭素同位体比の低いDICを含んだ地下水が、マングローブ林から河川へ流出したことを示している。
マングローブ林からの炭素流出の影響を定量するために、塩分と炭素同位体を指標とした混合を仮定して、分析値の評価を行った。マングローブ林からの炭素成分の寄与があっても、塩分には影響しないと考えられることから、塩分を指標とした計算では、河川水と海水が混合したときの状態が再現でき、そのときのDIC濃度と炭素同位体比を計算上の値として求めることができる。この計算値と実測値のずれを利用すれば、マングローブ林からの炭素成分の寄与を見積ることが可能となる。この解析により、おおよそ最大3割程度の炭素がマングローブ林由来であると推定された。
マングローブ林からの炭素流出の影響を定量するために、塩分と炭素同位体を指標とした混合を仮定して、分析値の評価を行った。マングローブ林からの炭素成分の寄与があっても、塩分には影響しないと考えられることから、塩分を指標とした計算では、河川水と海水が混合したときの状態が再現でき、そのときのDIC濃度と炭素同位体比を計算上の値として求めることができる。この計算値と実測値のずれを利用すれば、マングローブ林からの炭素成分の寄与を見積ることが可能となる。この解析により、おおよそ最大3割程度の炭素がマングローブ林由来であると推定された。