JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW36] [JJ] 都市域の水環境と地質

2017年5月20日(土) 13:45 〜 15:15 304 (国際会議場 3F)

コンビーナ:林 武司(秋田大学教育文化学部)、西田 継(山梨大学大学院総合研究部国際流域環境研究センター)、鈴木 弘明(日本工営株式会社 中央研究所 総合技術開発部)、浅田 素之(清水建設株式会社 技術研究所)、座長:林 武司(秋田大学教育文化学部)、座長:西田 継(山梨大学大学院総合研究部国際流域環境研究センター)、座長:鈴木 弘明(日本工営株式会社 中央研究所 総合技術開発部)、座長:浅田 素之(清水建設株式会社 技術研究所)、座長:安原 正也(立正大学地球環境科学部)

14:15 〜 14:30

[AHW36-03] 首都圏における地下温度の経年的な上昇とその要因―地下温度の長期変化に認められる地下水開発の影響―

*宮越 昭暢1林 武司2川合 将文3川島 眞一3國分 邦紀3濱元 栄起4八戸 昭一4 (1.国立研究開発法人産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門、2.秋田大学教育文化学部、3.東京都土木技術支援・人材育成センター、4.埼玉県環境科学国際センター)

キーワード:地下温度、地下水流動、地下温暖化、地下水開発、都市化、首都圏

筆者らは,都市域における長期の地下水利用や都市特有の熱環境,地球温暖化に伴う気候変動が地下環境に及ぼす長期的な影響を把握するため,首都圏に属する東京都および埼玉県を対象として,地下温度観測を継続的に実施している。これまでに,両都県に整備されている地盤沈下・地下水位観測井網を活用して,2000年から2016年まで地下温度プロファイルを繰り返し測定するとともに,2007年(埼玉県内4地点)および2012・2013年(東京都内6地点)から地下温度の高精度モニタリングを実施し,地下温度の連続的かつ微細な変化と,深度による変化傾向の差異を調査してきた。本発表では,それらの観測結果と,観測結果から明らかとなってきた地下温度変化の要因に関する検討結果を報告する。
筆者らの先行研究(宮越ほか,2010など)により,両都県の地下温度分布には明瞭な地域差が認められ,都心では郊外よりも相対的に高温であることが明らかとなっている。本研究では,2013~2016年の調査によって得られた地下温度分布と2003~2005年時の地下温度分布の比較により,過去10年間に,地下浅部に広く温度上昇が生じていることが明らかとなった。また,地下温度の上昇量は郊外よりも都心で大きく,両地域の温度差が増大していることが明らかとなった。さらに,地下温度の上昇は時間の経過とともに,より深部でも確認され,地下温暖化が地下深部に向かって拡大していることが示された。
地下温度のモニタリング結果から,これら地下温度の上昇は継続的に生じていることが確認され,温度上昇率は地域や深度により異なることが明らかとなった。埼玉県南東部の低地部に位置する観測地点では,深度30mで0.022℃/年,東京都東部に位置する観測地点では同じ深度で0.018℃/年であり,温度上昇率の変動は比較的小さく,観測期間中を通じて概ね一定した上昇傾向を示した。これらの地点は河川沿いの沖積低地に位置しており,地下温暖化は主に地表面温度の上昇に伴う熱伝導によって形成されたと考えられた。
一方,埼玉県南西部および東京都西部の武蔵野台地に位置する観測地点では,地下温度プロファイルの繰り返し測定結果から地下浅部の継続的な上昇が確認されるものの,温度上昇率は一様でない。また,温度上昇率には経年的な変化だけでなく,深度による変化も認められた。さらに,地下浅部だけでなく深度100m以深においても,温度変化は小さいものの局所的に有意な変化が認められた。これらの複雑な地下温度の変化は,水理水頭分布の経年的な変化の大きい地域や低水頭部で生じており,地下水流動の変化が地下温度分布の経年的な変化に影響を与えていることを示唆している。各観測地点で観測された地下温度の変化を地下地質構造や地下水流動と併せて解析することで,首都圏における地下温暖化の形成メカニズムを明らかにできると考えられる。
本研究は,東京都土木技術支援・人材育成センター,秋田大学,産業技術総合研究所による共同研究,ならびに埼玉県,秋田大学,産業技術総合研究所による共同研究の一部として実施した。