JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS14] [EE] Marine ecosystems and biogeochemical cycles: theory, observation and modeling

2017年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:平田 貴文(北海道大学地球環境科学研究院)、伊藤 進一(東京大学大気海洋研究所)、Eileen E Hofmann(Old Dominion University)、Enrique N Curchitser(Rutgers University New Brunswick)

[AOS14-P05] CMPI5モデルを用いた温暖化が海洋基礎生産へ及ぼす影響の解析

*中村 有希1岡 顕1 (1.東京大学)

キーワード:海洋基礎生産、海洋輸出生産、CMIP5、温暖化

温暖化により海洋では成層化、酸性化、脱酸素化などの変化が生じ、海洋生態系へも影響が及ぶことが懸念されている。モデルを用いた複数の先行研究によって、将来的に植物プランクトンによる全球の海洋基礎生産(Net Primary Production;NPP)と海洋輸出生産(Export Production;EP)は減少することが予測されており、その主な原因は成層化による栄養塩供給の減少であると考えられている(Fu et al.,2015ほか)。しかし、CMIP5モデル間の結果を比較した研究によると、EPについては全てのモデルが減少を示す一方で、NPPについてはほとんど変化しないモデルもみられた(Bopp et al.,2013)。本研究の目的は、10個のCMIP5モデルを用いて、温暖化進行時にNPPの変化がモデルにより大きく異なる要因を明らかにすることである。

全球的なNPPとEPの変化には熱帯の寄与が大きいことがわかったため、熱帯に着目して研究を行った。NPP、EPに関してCMIP5モデル間の相互比較を行うことにより、NPPの変化がモデルによって異なる要因は、1. 成層化、2. 再無機化の温度依存性、の程度の違いによって説明できることがわかった。温暖化した際にNPPがほとんど変化しない例外的なモデル(GFDL-ESM2G)に関しては、温度に依存する再無機化のパラーメータが過大評価されている可能性が考えられる。つまり温暖化で再無機化が活発化したことによって、EPは減少しているにも関わらずNPPは変化しないと考えられる。Nino.3 SST Indexとの回帰から、ENSOに伴うNPP変化を調べたところ、衛星データによる評価および他のモデルではエルニーニョ時にNPPが低下するのに対し、温暖化時にNPPがほとんど変化しなかったモデルについては、上昇することがわかった。ENSOなどの自然変動に伴うNPPの応答を各モデルで評価することは、より正確な将来予測へとつながることが示唆される。

今後は温暖化により海洋基礎生産が炭素循環へ与える影響の変化を明らかにすることを目的とし、海洋生態系モデルを用いて感度実験を行う予定である。