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[AOS18-04] 2000年以降のマサバ資源量に関わる黒潮の海洋環境変動
キーワード:マサバ太平洋系群、加入量変動、黒潮
マサバ (Scomber japonicus) 太平洋系群の加入量変動の指標である再生産成功率 (Recruit Per Spawning stock biomass; RPS) は、産卵場水温、産卵親魚量、マイワシ資源量を説明変数とする拡張リッカー型再生産モデルで高精度に推定できると考えられてきたが、2000年ごろを境に、近年推定精度が著しく低下している。しかし、このレジーム変化をもたらした海洋環境変化および近年の加入量年々変動に影響を与えている海洋環境変動に関する知見は乏しい。そこで本研究では、マサバ親魚に影響する産卵場環境や、卵仔魚輸送に影響する黒潮の動態と加入量変動の関係解明を目的として研究を行い、さらに2000年以降の加入量変動について既往モデルの改良を試みた。本研究により、黒潮域内側に分布する産卵場水温の冬季表面水温の重要性に加えて、粒子追跡によるマサバの生活史の最初期ステージの経験水温の推定が、加入量変動の高精度化に寄与することが明らかとなった (なおこの粒子追跡実験は放出場を固定したものである)。さらに、親魚が成熟して産卵期を迎える3月に黒潮が非大蛇行接岸流路をとる場合は加入成功率が高く、伊豆諸島を迂回する流路の場合は加入成功率が低〜中程度であったことが示された。迂回流路の際にも、黒潮内側域沿岸付近の冬季表面水温が相対的に高い年はとりわけ加入が悪い傾向があった。これらの結果から、晩冬期〜春季の産卵親魚の摂餌場としての黒潮内側域の重要性と、卵の量・質に親魚の摂餌状態が影響するマサバの、摂餌場-産卵場の空間的制約の可能性、そして黒潮流路分布に伴う春季仔魚の経験水温の年々変動が加入に与える影響が示唆された。既往モデルの推定精度が2000年以降悪くなる原因の一つとして、黒潮の流路が2000年ごろを境に変化し、伊豆諸島の東側でより沿岸側を通過するようになったことが挙げられた。