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[AOS21-04] 静止海色衛星による河川プリュームの高時空間分解能観測
キーワード:有色溶存有機物、海面塩分、河川プリューム、沿岸域、静止海色衛星
河川プリュームの指標となる海表面塩分(SSS)の情報は、沿岸域の水環境のみならず養殖漁場環境の観点から重要である。しかし、沿岸域においては衛星観測から得られるSSSデータの水平分解能は粗く(例えばSAC-D衛星は約50 km)、沿岸域に特化した塩分場推定手法を確立する必要がある。低塩な河川プリュームは陸域由来の有色溶存有機物(CDOM)を多く含み、CDOMと塩分には高い相関関係があることが知られている。2011年より、静止海色衛星GOCI-COMSによって1日8回毎時のCDOMマップが高い水平解像度(500 m)で得られている。本研究では、現場海洋観測結果に基づいて衛星観測により得られたCDOMマップから海表面塩分を推定する方法を開発し、沿岸域における海表面塩分マップを整備した。河川からの陸水負荷が大きく、現場観測データが豊富である大阪湾・播磨灘・紀伊水道を実験対象として、主に台風襲来前後における河川プリュームの動態を解析した。河川出水が卓越する夏季から秋季にかけて対象海域において現場観測を実施した結果、衛星CDOMと現場CDOMデータとの良好な回帰式が得られ(相関係数は0.88)、また、CDOMとSSSには良好な負の相関関係(相関係数は-0.92)が見出された。衛星CDOMからSSSの推定式が作成され、衛星CDOMデータからSSSマップが作成できた。解析結果の一例として、2015年7月3日に発生した台風11号の近畿地方上陸前(7月15日)と後(7月24日)において変化した海表面塩分を、淀川流域降水量と河川流量の時系列ともに図1に示す。台風上陸後に降雨と淀川の出水が多くなった後、大阪湾奥に形成されていた河川プリュームが沖側に張り出し、ほぼ大阪湾東部全体に広がっていた。播磨灘の沿岸域に注目すると、沿岸に張り付いていたプリュームが台風上陸後に沖側へ数km張り出した。淡路島の集水域の狭い河川からの出水のため、沿岸に張り付く河川プリュームは幅が狭い。7月15日において紀伊水道に貫入していた高塩な黒潮水塊が、7月20日は河川出水により低塩化していた。このように、海色衛星を用いて海表面塩分マップを得ることで、河川プリュームの特徴を定性的かつ定量的に捉えることができる。整備されたSSSマッププロダクトは、すでに沿岸域における高解像度海洋シミュレーションの初期値や検証データとして利用され始めており、津波、高潮、急潮などの防災面や、赤潮や陸水由来栄養塩の分布などの水環境面研究の基礎データとなりえる。