JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS21] [JJ] 陸域と海洋をつなぐ水循環の物理過程

2017年5月22日(月) 09:00 〜 10:30 304 (国際会議場 3F)

コンビーナ:木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、山崎 大(海洋研究開発機構)、松村 義正(東京大学 大気海洋研究所)、山敷 庸亮(京都大学大学院総合生存学館)、座長:木田 新一郎(九州大学応用力学研究所)、座長:山崎 大(海洋研究開発機構)

10:00 〜 10:15

[AOS21-05] 次世代衛星高度計をデータ同化する全球河川流量推定フレームワークの開発

*池嶋 大樹1山崎 大2鼎 信次郎1 (1.東京工業大学、2.海洋研究開発機構)

キーワード:データ同化、SWOT、局所アンサンブル変換カルマンフィルタ、河川流量、衛星高度計

地表水の時空間的変動を全球スケールで把握することは,内陸水域・海洋問わず地球全体の水循環解明や水資源管理に重要である.河川流量は陸域水動態における最も重要な要素の一つであり、その高精度な推定が望まれている.河川流量の計測は旧来より河川に設置した流量計によって行われてきたが,国や地域によってその数や分布には違いがある.また,情報公開の度合いも異なっており,全球で空間的に均一なデータを収集することは困難であった.2021年に打ち上げが予定されている次世代衛星高度計SWOT(Surface Water and Ocean Topography)は,レーダー干渉計を用いて100m未満の解像度で地表水の水面標高を面的に観測できる初めての人工衛星であり、全球規模で地表水動態の詳細を捉えることが期待される.しかし,SWOT衛星は同一地点を5~21日に一度しか観測できないため,SWOT観測の水面標高のみから時間的に連続して高精度な河川流量を推定することは困難である.空間的だけでなく時間的にも連続な流量推定の実現を目指し,SWOT観測と河川モデルを組み合わせて流量を推定するデータ同化手法の適用が検討されている.既往研究では計算コスト等の制約から特定の地域や河川に限定した同化が行われていたが,本研究ではSWOTの性能を最大限活かすために全球スケールでのデータ同化フレームワークを初めて開発した.河川モデルとしてCaMa-Floodを用いたことで,高速かつ高精度な流量推定が可能となっただけでなく,SWOT衛星の観測する水面標高を直接同化することが可能となった.また,データ同化手法としてはアンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)の派生形であるLETKF(局所アンサンブル変換カルマンフィルタ)を採用し,河川モデルという非線形モデルに対しても現実的な計算コストで全球における同化が可能となった.2021年に予定されているSWOTの打ち上げ前にデータ同化手法の有効性を検証するため,ここでは開発したデータ同化フレームワークに対し,仮想観測を用いた仮想実験を行なった.これは,意図的に乱した河川モデルのシミュレーション結果に対して,河川モデルを用いて作成した仮想観測を同化することで河川流量の再現性を向上させられるかを試した実験である.実験の結果,大陸河川のような大規模河川において精度の向上が見られた.特に,河川の下流においてはその地点で観測のない日についても河川流量を小さい誤差で推定することができた.これは上流の多くの支流で観測・同化された流量が河川を流下し,下流の流量改善に貢献しているからである.また,降水量データ,あるいはそれより計算される局所的なグリッド内からの陸面流出量データが現実的でない場合でも,河口付近では高精度な流量推定する事が可能であることもわかった.本研究の結果より,全球スケールで時空間的に連続な河川流量推定における将来のSWOT観測の有効性が示唆された.