10:00 〜 10:15
[AOS23-05] 北海道噴火湾底層における無機ヨウ素の化学形態変化
キーワード:脱窒、沿岸、酸化還元
海水にはヨウ素が豊富に含まれており、その大部分は無機ヨウ素として存在する。酸化的な海水中ではヨウ素酸(IO3-)として安定に存在し、その濃度は約0.45~0.5 μmol/Lである(e.g. Sugawara and Terada 1957)。酸素が欠乏した還元的な環境では、IO3-が還元されてヨウ化物(I-)になる。生物を介したIO3-還元も起こることが確認されていて、亜熱帯表層や高生物生産域で比較的高濃度(< 0.1 μmol/L)のI-が見られる(Campos et al., 1996)。海洋の無機ヨウ素の酸化還元プロセスは複数あると考えられ、ヨウ素の化学形態を決める要因は複雑で解明されていない部分が多い。
本研究では、高生産の沿岸域におけるヨウ素の化学形態変化を調べるため、北海道噴火湾において、2016年2,3,4,5,7,8,11,12月に海洋観測を実施した。湾央(St30)で表面から海底直上1mまでの計14層でCTD採水を行った。海水中の栄養塩類(NO3+NO2, NO2, NH4, PO4, SiO2)を比色法(オートアナライザ)、I-を電気化学的手法で測定した。IO3-をアスコルビン酸で還元した試水中のI-を全無機ヨウ素(T-I)とした。
年間を通して、T-Iの全層平均濃度(560-580 nmol/L)に大きな変化はなかった。いっぽう、底層90mの濃度変化は著しく、90mのI-濃度は5月(108 nmol/L)から7月(150 nmol/L)にかけて1.5倍ほどまで上昇、IO3-濃度は5月(432 nmol/L)から7月(188 nmol/L)にかけて半分以下まで低下した。既往研究によると、噴火湾では3~4月の春季ブルームで生産された有機物が海底に堆積して、5~8月に有機物分解が起こり貧酸素化が起こる。それに伴い、堆積物中で硝酸還元が起こっていることが示唆されている(Hioki et al., 2015)。硝酸還元の度合いを示す指標としてN*値(= NO2 + NO3 + NH4 - 16×PO4)を用いた。この値のマイナスの絶対値が大きいほど、硝酸還元の寄与が大きいことを示唆する。噴火湾底層90mにおける4, 5, 7月のN*値は-6, -12, -14 (μmol/L)であった。
まとめると、噴火湾底層90mでは、5月から7月にかけてN*値が大きく低下、IO3-が急激に減少、I-が増加した。噴火湾の海底堆積物中では硝酸還元菌がNO3-を還元するのと同時にIO3-も還元することが示唆された。堆積物中でIO3-が還元されI-になり、その一部が底層水にもたらされI-濃度を上昇させたと考えられた。
本研究では、高生産の沿岸域におけるヨウ素の化学形態変化を調べるため、北海道噴火湾において、2016年2,3,4,5,7,8,11,12月に海洋観測を実施した。湾央(St30)で表面から海底直上1mまでの計14層でCTD採水を行った。海水中の栄養塩類(NO3+NO2, NO2, NH4, PO4, SiO2)を比色法(オートアナライザ)、I-を電気化学的手法で測定した。IO3-をアスコルビン酸で還元した試水中のI-を全無機ヨウ素(T-I)とした。
年間を通して、T-Iの全層平均濃度(560-580 nmol/L)に大きな変化はなかった。いっぽう、底層90mの濃度変化は著しく、90mのI-濃度は5月(108 nmol/L)から7月(150 nmol/L)にかけて1.5倍ほどまで上昇、IO3-濃度は5月(432 nmol/L)から7月(188 nmol/L)にかけて半分以下まで低下した。既往研究によると、噴火湾では3~4月の春季ブルームで生産された有機物が海底に堆積して、5~8月に有機物分解が起こり貧酸素化が起こる。それに伴い、堆積物中で硝酸還元が起こっていることが示唆されている(Hioki et al., 2015)。硝酸還元の度合いを示す指標としてN*値(= NO2 + NO3 + NH4 - 16×PO4)を用いた。この値のマイナスの絶対値が大きいほど、硝酸還元の寄与が大きいことを示唆する。噴火湾底層90mにおける4, 5, 7月のN*値は-6, -12, -14 (μmol/L)であった。
まとめると、噴火湾底層90mでは、5月から7月にかけてN*値が大きく低下、IO3-が急激に減少、I-が増加した。噴火湾の海底堆積物中では硝酸還元菌がNO3-を還元するのと同時にIO3-も還元することが示唆された。堆積物中でIO3-が還元されI-になり、その一部が底層水にもたらされI-濃度を上昇させたと考えられた。