JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS24] [JJ] 海洋と大気の計測技術ーセンサーからプラットフォームまでー

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:安藤 健太郎(海洋研究開発機構)、Hiroshi Uchida(JAMSTEC Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、石原 靖久(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

[AOS24-P02] Argoフロートに搭載されているCTDセンサーの簡易的事前検定手法の開発

*平野 瑞恵1細田 滋毅1橋向 高幸2廣田 聡子2増田 周平1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.(株)マリン・ワーク・ジャパン)

キーワード:アルゴフロート、CTDセンサー、センサー検定

Argoフロート(以下フロート)に搭載されているCTD(電気伝導度(塩分)、水温、圧力)センサーの殆どが長期間、安定して計測できる米国製Sea Bird Electronics(以下SBE)社製SBE41である。長期にわたる海中での観測中において、CTDセンサーが国際Argo計画で決められた精度を満たして安定的に計測を行い続けることができるよう、JAMSTECでは、フロート投入前にセンサーを取り外さずに簡易的かつ効率的にCTDセンサー精度確認を行う手法を開発した。


国際Argo計画では、JAMSTECをはじめ世界各国の研究機関などが協力し、全球に3000台以上のフロートによる全球Argo観測網を構築し、海洋内部変動をリアルタイムでくまなくモニタリングしている。フロートは10日周期で水深2000mから海面付近までの水温と塩分を3~4年間自動で観測を行うが、気候変動シグナルを出来るだけ正確に検出できるよう、計測されたデータは国際Argo計画で定められた目標精度(水温±0.005℃、塩分±0.01PSU)を満たす必要がある。


JAMSTECでは2000年からこれまで約1100台のSBE41が搭載されたフロートを投入した。全てのフロートに搭載されているCTDセンサーの精度は、SBE社出荷時に確認済みであるが、種々の要因で出荷後に精度を満たさなくなる場合がある。このため、JAMSTECではこれまでSBE社と同様のセンサー検定システムを導入し、500台以上のCTDセンサーの精度確認を行なってきた。そしてそのうち、目標精度を満たさない30台のセンサーを検出し、精度を満たさないCTDセンサーを搭載したフロートの海洋への投入を未然に防ぐことができた。しかし、この検定システムの運用は複雑で、フロート本体を開封し、センサーを本体から取り外して検定を行う必要があるため、特殊な技術が必要なうえ、時間もかかり全てのフロートに対して精度確認は不可能であった。そこで、フロートを開封することなく、効率よく全数のCTDセンサーに対し精度確認できる手法と検定システム(簡易検定システム)の開発を行った。


簡易検定システムは、予め水温と塩分を調整した人工海水を、精度が担保されている水温センサーおよび塩分センサー、精度確認を行うフロートのCTDセンサーへ一定量排出可能なポンプを用いて同時に送液し、自動的に計測した各センサーの残差を検出するものである。本システムでは、実験の室温やセンサー類の温度管理を厳密に行うことが出来るかどうかで検定精度に大きな影響が出ることが分かった。そこで、空調の配置やセンサー部の保温などの対処を行い、人工海水の温度変化を±0.3℃内に保つことに成功した。これにより、簡易検定システムにおいても、フロートのCTDセンサーが国際Argo計画で定められている目標精度内かどうかを確認することが可能となり、投入前に精度に疑いのあるセンサーを効率よく検出できる目途がたったと考えられる。


簡易検定システムの検定時の温度管理ついては、さらに効率的に行うべく、改良の余地が残されている。今後、簡易検定システムを運用しつつ、これまでの検定システムを並行して使用することで検定数を増やし、簡易検定システムの機能向上と効率化を行う予定である。