JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS26] [JJ] 海洋生物資源保全のための海洋生物多様性変動研究

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 303 (国際会議場 3F)

コンビーナ:小池 勲夫(琉球大学)、中田 薫(国立研究開発法人水産研究・教育機構)、藤倉 克則(海洋研究開発機構海洋生物多様性研究分野)、杉崎 宏哉(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所)、座長:藤倉 克則(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:杉崎 宏哉(国立研究開発法人水産研究・教育機構)

14:30 〜 14:45

[AOS26-04] 日本周辺水域におけるプランクトンの生物多様性

*田所 和明1宮本 洋臣1市川 忠史1森本 晴之2日高 清隆3亀田 卓彦3杉崎 宏哉3西内 耕4北島 聡4 (1.国立研究開発法人水産研究・教育機構/東北区水産研究所、2.国立研究開発法人水産研究・教育機構/日本海区水産研究所、3.国立研究開発法人水産研究・教育機構/中央水産研究所、4.国立研究開発法人水産研究・教育機構/西海区水産研究所)

キーワード:生物多様性、カイアシ類、プランクトン、西部北太平洋

プランクトン群集は海洋環境と密接な関係を持っているため、海洋環境を反映した特徴を示す。プランクトンの生産量を考えるために、メソ動物プランクトン現存量の地理的な変動を見ると、北太平洋ではベーリング海で最も高い値が見られるものの、オホーツク海および道東から東北沖にかけての親潮域でも高い値が見られる。沿岸湧昇域を除くと、これらの水域の動物プランクトン現存量は世界でも、最も高い水域の一つとなっている(ウェブサイトCopepod を参照, http://www.st.nmfs.noaa.gov/copepod/)。このような高い動物プランクトン生産は、高い栄養塩供給量によってもたらされていると考えられる。
 日本周辺水域のプランクトンの多様性については、近年盛んに研究が行われている。例えば有孔虫を対象とした研究では、沖縄近海の生物多様性は世界的に見ても非常に高いことが示されている。また、オキアミを対象とした研究では、日本周辺水域の生物多様性も非常に高いことが示されている。さらにヤムシ類を対象とした研究においても、日本周辺とりわけ黒潮域で生物多様性が高いことが示されている。以上から、これまでの研究で日本周辺水域のプランクトンの生産は高く、生物多様性も高いことが示されている。 このようにこれまでの研究で、日本周辺のプランクトンの多様性は高いことが明らかになっている。動物プランクトンでは、カイアシ類が特に現存量・種数とも多いため、それらを対象とした研究を行うことが重要である。そこで我々は、広域的に採集された日本周辺水域のカイアシ類の標本を分析することで、生物多様性を調べた。2012年4月に日本周辺の90観測点で、ノルパックネット(口径45cm 目合い 0.335mm)を水深150m(それよりも浅い場合は海底直上から)〜0mまで鉛直曳網することで動物プランクトンを採集し、種レベルで個体数を計数した。日本周辺水域では190種のカイアシ類が出現した。出現種数を海域間で比較すると、太平洋側で多く、日本海側で少なかった。また東シナ海では日本海よりも多く、太平洋よりも少なかった。次に緯度経度1度グリッド毎に種レベルの個体数の平均値を求め、クラスター解析によってグリッド間の類似度を求めた。その結果、1)太平洋、2)東シナ海〜日本海西部、3)沿岸、4)亜寒帯の4つのグループに分けることが出来た。太平洋のグループは黒潮に関係したカイアシ類群集と考えられた。また2)東シナ海〜日本海西部は東シナ海に関係したプランクトンが主体となると考えられた。3)沿岸のグループは多くはないが、内湾等の浅海域に関係した種が主体となると考えられた。4)亜寒帯のグループは大型で現存量は多い一方で多様性の低いカイアシ類群集から構成された。以上のように、日本周辺水域では多様なカイアシ類群集が分布することが明らかとなった。これら多様な群集は日本周辺水域の複雑かつ多様な海洋環境に関係して形成されていると考えられた。