[AOS26-P09] 東北沿岸域における底引き網漁業のためのハビタットモデル構築
キーワード:ハビタットモデル、底魚、海洋再解析
漁獲対象となる魚種の好適生息域を正確に見積もることができるようになることで、その魚種の生息域が海洋環境変動によりどのような影響を受けるかを理解できることに加えて、その漁業資源の効率的な利用に資する情報を作り出すことが可能となる。好適生息域推定モデル(HSIモデル)は生態系アセスメントや生態系復元研究に加えて、水産学における漁場推定研究でも広く利用されており、漁業情報サービス等で活用され始めている。HSIモデルは対象魚種の豊度と様々な海洋環境変数との関係を、統計モデルを用いて推定することにより、その魚種にとっての好適生息域を数値化して表現することができる。本研究では、水産研究・教育機構東北区水産研究所で集計された「太平洋北区沖合底びき網漁業漁場別漁獲統計資料」に収められている約30種類の魚種を対象として、複数の機械学習アルゴリズムを適用することにより、東北沿岸域におけるいくつかの底魚類についてのHSIモデルを作成した。また海洋環境データとしては、JAMSTEC地球情報研究センターと気象研究所で共同開発したFORA-WNP30を用いた。このデータセットは水平解像度0.1度、鉛直54層で北西太平洋における3次元の海洋循環や物理構造を精緻に再現した再解析データで、底魚類が生息する底層の環境も再現されている。本研究では、東北沖で起こった海洋環境変動に伴うHSI分布の変動について解析を行い、マコガレイやババガレイ等のいくつかの魚種について、2012年冬季に起こった親潮の南下に伴い好適生息域が変動していることが示唆される結果を得た。