JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS30] [JJ] 沿岸域の海洋循環・物質循環と生物の応答動態

2017年5月20日(土) 10:45 〜 12:15 303 (国際会議場 3F)

コンビーナ:森本 昭彦(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)、田中 潔(東京大学)、福田 秀樹(東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター沿岸保全分野)、栗原 晴子(琉球大学)、座長:森本 昭彦(Center for Marine Environmental Studies, Ehime University)

12:00 〜 12:15

[AOS30-06] 短周期の内部波がミズクラゲの集群形成に及ぼす影響

*眞野 能1郭 新宇2藤井 直紀3吉江 直樹2武岡 英隆4 (1.愛媛大学大学院理工学研究科、2.愛媛大学沿岸環境科学研究センター、3.佐賀大学低平地沿岸海域研究センター、4.愛媛大学南予水産研究センター)

キーワード:ミズクラゲ、集群、内部波

ミズクラゲなどいくつかの種類のクラゲはしばしば高密度なパッチ状の集群を形成することが知られている.このような集群は,発電所取水口の閉塞や定置網の破損などの被害を引き起こすことがあり,生態系にも何らかの影響があるのではないかと考えられている.しかし,これまでクラゲのパッチ状集群の形成メカニズムはおろか,その3次元的な形態も詳細には明らかにされていなかった.そこで本研究では,ミズクラゲを対象に計量魚群探知機による観測を行い,クラゲ集群の3次元的な形態の把握を試みた.また,観測海域周辺では10~20分周期の内部波がしばしば観測されることから,この内部波がクラゲ集群の形成に何らかの影響を及ぼしているのではないかと考え,内部波を想定した流動場での粒子追跡計算を行い,集群の形成メカニズムを考察した.

計量魚群探知機(ソニック社製KCE-300,周波数:120kHzおよび38kHz)による観測は,豊後水道に面する愛媛県の法華津湾において2013~2016年の夏季に実施した.その結果,観測された集群の形状は以下の3つのパターンに大別することができた.(1)帯状や塊状で,高密度なパッチ状のもの.Churnside et al.(2015)の観測事例と同様に内部が中空のものも見られ,長さ数百mに及ぶチューブ状の集群もあった.(2)密度躍層と同水深で広範囲に分布する層状のもの.(3)鉛直断面が波状の構造をしたもの.

次に,クラゲ個体が周囲の流れに対して完全に受動的であると仮定して,鉛直2次元の平面上で,法華津湾で観測された周期・波長の内部波を想定した流動場での粒子追跡計算を行った.その結果,(3)の波状の分布と類似した構造が再現されたが,(1)のようなパッチ状の構造は再現できなかった.このことから,(1)のような非常に高密度なパッチ状の構造は流動場の影響だけで形成されたとは考えにくく,クラゲによる積極的な遊泳行動も関与している可能性がある.また,粒子追跡計算の結果はクラゲの餌となる動物プランクトンの分布も表現していると考えると,クラゲのパッチ状集群は捕食のために餌を追いかけてきた結果として形成されたものでもないということが言える.今後,クラゲのパッチ状集群の形成メカニズムを解明するには,クラゲの遊泳行動観察にもとづいた遊泳モデルを流動モデルに組み入れることが必要である.