JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS30] [JJ] 沿岸域の海洋循環・物質循環と生物の応答動態

2017年5月20日(土) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:森本 昭彦(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)、田中 潔(東京大学)、福田 秀樹(東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター沿岸保全分野)、栗原 晴子(琉球大学)

[AOS30-P10] 鉛直混合過程を考慮した生態系モデルにおけるクロロフィルa水平2次元パターン形成

*黒田 雄斗1松浦 知徳2中田 聡史3 (1.富山大学大学院理工学教育部、2.富山大学大学院理工学研究部、3.神戸大学大学院海事科学研究科)

キーワード:クロロフィルa、生態系モデル、富山湾、2次元パターン、鉛直混合

富山湾では,6月から7月の梅雨期や夏季に表層数mのプランクトンの活動が活発となり,湾内においてクロロフィルaの反時計回りの渦状分布がしばしばみられる(図1).この特徴的な分布は富山湾の物理過程(移流,拡散)と生態系との関係から形成されると考えられる(黒田・松浦,2015)が,その詳細な形成・変動メカニズムは未解明である.そこで,衛星画像,海洋観測データ,および海洋物理過程を導入した生態系モデルを用い,この形成・変動の原因解明,特に鉛直混合過程や河川からの栄養塩の流入に着目して取り組むことを研究の目的とする.
本研究では, 生態系モデルとして単純なNPZモデルとし,これに水平2次元の移流項,3次元の拡散項を導入した方程式系に対し,差分法を用いて数値的に解くことによって,クロロフィルaのパターン形成メカニズムを調べた.海域の設定としては,富山湾規模の湾を考え100 km x 100 kmの海域で,モデルの水平解像度を2 km x 2 km とした.モデル計算に関して,水平拡散係数は10 (m2/s) と一定にし, 鉛直拡散係数は10-5~10-2(m2/s)の範囲で行った。流れ場は反時計回りの循環場とし,プランクトンのパラメータは,マクロとミクロ,捕食・被食の関係を示す食植速度を変化させて複数の数値実験を行った.数値実験では,河川からの栄養塩の流入を仮定して,モデル領域下方から栄養塩濃度が増えていく状況を設定し,その変化を見た.
富山湾の実態把握と数値実験との比較のためCOMS-GOCI衛星画像による解析も行った.データとしては,2010年~2014年の4月~9月までと2015年の4月~10月1日までのデータである(2012年のみ7月のデータは不足).
鉛直拡散の無い2次元モデルでの数値実験では,それぞれのパラメータで反時計回りの渦状のパターンの形成が見られた.その反時計回りの渦状のパターンは,形成後徐々に崩れ,次第にモデル領域内の植物プランクトン量は,一様となる変動を示した(図2).ミクロ動物プランクトンパラメータでは,一様になった後に渦状のパターンが再び見られた.
鉛直拡散を加えた3次元モデルでも同様に表層で反時計回りの渦状のパターンが見られた.しかしながら,鉛直混合により表層から与えられる栄養塩が下層まで達するため,植物プランクトンの濃度は,2次元モデルよりも低くなった.さらに,動物プランクトンのパラメータや鉛直拡散係数の大きさの違いによって,最下層まで渦状のパターンが形成されたケースと,形成されないケースが現れた.したがって,動物プランクトン大きさや混合の強さの変化で深さ方向に2次元パターンの変動の違いが現れた.
これらの実験から,富山湾内での渦状のパターンの形成には,河川から供給された栄養塩が反時計回りの流れ場に乗り移動し,それを植物プランクトンが消費することによる形成が考えられる.また,湾内に栄養塩量が豊富にある時には,プランクトン間の捕食・被捕食のやりとりが盛んな時に形成することが分かった.
衛星画像データの解析からは,富山湾におけるクロロフィルa濃度分布のパターンは,①沖で高濃度となるパターン,②沿岸で高濃度となるパターン,③黒部川付近から富山湾内に向かって高濃度の部分が発達しているパターン,④渦状のパターンの4つに分類できることがわかった.最後の渦状のパターンは,数値実験における渦状パターンの形成により,メカニズムを説明できる可能性が示された.この解析から本研究で注目している渦状のパターンの形成に関して黒部川付近からの湧水と黒部川からの栄養塩供給が富山湾内の反時計回りの循環場に乗ることにより形成しているのではないかという仮説が出てきた.そのことに関しては今後のモデル研究において調べていく予定である.