JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-TT 計測技術・研究手法

[A-TT42] [JJ] 飛行艇を用いた臨床地球惑星科学の創成

2017年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:角皆 潤(名古屋大学大学院環境学研究科)、植松 光夫(東京大学大気海洋研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、篠原 宏志(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

[ATT42-P01] 飛行艇を利用した海洋時系列観測

*鋤柄 千穂1角皆 潤1中川 書子1 (1.名古屋大学 大学院 環境学研究科)

キーワード:海洋学、飛行艇観測、時系列観測、生物地球化学過程

海洋の物質循環や大気—海洋間の物質収支を研究する上で、主要なパラメータの時空間変動を網羅できる観測網の構築は重要である。特に海洋表層には一時的な観測(スナップショット観測)で確定することのできない重要なプロセスが数多く存在するため、高頻度の時系列観測が必要である。しかし、船舶による定点(定線)時系列観測は、船舶や人員の確保が必要となり継続的に観測することは容易ではない。また、係留ブイにセンサーやセジメントトラップを取り付けた観測は、代表的な海域の物理的・生物地球化学的時間変化を理解するために不可欠なデータを供給し続けているが、センサーは高価であり、観測できるパラメータも基本的な項目に限定されている。このような背景のもとに、海洋観測の時間解像度を充実させる手法として、飛行艇の利用を提案する。
飛行艇は、現在の船舶より高い機動力があり、外洋の観測点でも数時間で到達することが可能なため、定点時系列観測に好都合なツールである。飛行艇では船舶観測のような大量採水や大型測器による観測は難しいが、表層(有光層)の基礎的な生物地球化学観測を行うだけでも、重要な時系列データを得ることができるだろう。さらに、従来の定点観測では追跡することの難しい、移動する研究対象の時系列変化を調べることも可能となるかもしれない。例えば、低気圧性のメソスケール渦の内部では、中心部の密度面の上昇にともない下層から栄養塩が供給され、高い生産があると報告されている。しかし、船舶では、移動する渦を追跡しながら観測することは容易ではない。飛行艇であれば、渦の位置を海面高度データから予測し、時系列で追跡して観測することが可能である。飛行艇の海洋観測への利用は、より高解像度の時系列観測を実現し、海洋表層で起きる短い時間スケールの変化を明らかにするだろう。このことは、海洋における物質循環の解明につながるだけではなく、将来予測のためのモデル研究の検証にも貢献できる。