[BCG10-P03] AFMによる炭酸塩鉱物の結晶成長・溶解現象のナノスケール解析
キーワード:カルサイト、結晶成長、溶解、原子間力顕微鏡
本研究では,環境変動指標鉱物の一つであり,わずかな温度変化や溶液濃度変化などでその溶解・結晶成長の様式を変化させると考えられている方解石について,より天然現象に近い温度条件と溶液濃度条件での溶解及び結晶成長過程を明らかにすることを目的とする。このため,原子間力顕微鏡(AFM)その場観察法を用いて,方解石の主要な平坦面(特異面)である{10-14}面と溶液間で起こる顕微的な溶解・結晶成長過程をリアルタイムで追跡し,その機構の解明と速度論的考察を深める。
本研究では,メキシコ-チワワ産の方解石を試料として実験を進めた。AFM実験開始直前にナイフで新たな(10-14)劈開面を露出させ、AFM試料台に固定した。炭酸カルシウム溶液については,あらかじめ作製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.01Mと塩化カルシウム水溶液0.01Mの2つのストック溶液を用いて,水溶液中のカルシウムイオンと炭酸イオンの比が1:1になるように調整しながら目的の過(不)飽和溶液を作製した。過(不)飽和度は、プログロムソフトPHREEQCにより計算した。AFM観察は、Digital Instruments社製のMultimode SPMユニットを搭載したNanoscope IIIで行った。溶解・結晶成長実験は Bruker AXS社製のair/fluid heater/coolerを搭載した液中セルを用いてフロースルー法で行い、溶液をシリンジポンプで約10 ml/hの流速で流した。溶解・結晶成長実験での過(不)飽和度Sの範囲は-4.91から0.90で、また、純水中での溶解実験も行った。実験温度は25(±0.2)℃で、温度制御はBio-HeaterとThermal Applications Controllerで行った。走査法はコンタクト・モードを用い、カンチレバーはSi3N4製、スキャナーは温度可変対応J-headを用いた。
溶解実験では,いずれの不飽和度でも4つのステップ(あるいは面)で囲まれた四角錐の形をしたエッチピットが形成された。ただし,不飽和度が高くなるにつれて,平行四辺形の一方の1組のステップ(あるいは面)の形状が湾曲する傾向にあった。また,ステップの後退速度に異方性が見られ,水平方向については,後退が速いステップはその速度の過飽和度依存性が高く,速度が遅いステップでは過飽和度依存性が低いことが分かった。一方,(10-14)面に垂直な方向に対する後退速度は前者よりかなり遅く,また,過飽和度依存も低くなることが分かった。
結晶成長実験でも,溶解実験同様4つのステップ(あるいは面)で囲まれた四角錐の形をしたスパイラル成長丘が形成された。この成長丘では稜線が明瞭に観察でき,上部は二層周期でうずを巻いていることが認められた。ちなみに,ステップ単層の高さは約3 Åであり,炭酸カルシウム1分子層の厚さに相当する。ステップあるいは面の前進速度については,水平方向については溶解時の後退速度よりも速いが,垂直方向については,溶解時の後退速度よりも遅い可能性がある。
本研究では,メキシコ-チワワ産の方解石を試料として実験を進めた。AFM実験開始直前にナイフで新たな(10-14)劈開面を露出させ、AFM試料台に固定した。炭酸カルシウム溶液については,あらかじめ作製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.01Mと塩化カルシウム水溶液0.01Mの2つのストック溶液を用いて,水溶液中のカルシウムイオンと炭酸イオンの比が1:1になるように調整しながら目的の過(不)飽和溶液を作製した。過(不)飽和度は、プログロムソフトPHREEQCにより計算した。AFM観察は、Digital Instruments社製のMultimode SPMユニットを搭載したNanoscope IIIで行った。溶解・結晶成長実験は Bruker AXS社製のair/fluid heater/coolerを搭載した液中セルを用いてフロースルー法で行い、溶液をシリンジポンプで約10 ml/hの流速で流した。溶解・結晶成長実験での過(不)飽和度Sの範囲は-4.91から0.90で、また、純水中での溶解実験も行った。実験温度は25(±0.2)℃で、温度制御はBio-HeaterとThermal Applications Controllerで行った。走査法はコンタクト・モードを用い、カンチレバーはSi3N4製、スキャナーは温度可変対応J-headを用いた。
溶解実験では,いずれの不飽和度でも4つのステップ(あるいは面)で囲まれた四角錐の形をしたエッチピットが形成された。ただし,不飽和度が高くなるにつれて,平行四辺形の一方の1組のステップ(あるいは面)の形状が湾曲する傾向にあった。また,ステップの後退速度に異方性が見られ,水平方向については,後退が速いステップはその速度の過飽和度依存性が高く,速度が遅いステップでは過飽和度依存性が低いことが分かった。一方,(10-14)面に垂直な方向に対する後退速度は前者よりかなり遅く,また,過飽和度依存も低くなることが分かった。
結晶成長実験でも,溶解実験同様4つのステップ(あるいは面)で囲まれた四角錐の形をしたスパイラル成長丘が形成された。この成長丘では稜線が明瞭に観察でき,上部は二層周期でうずを巻いていることが認められた。ちなみに,ステップ単層の高さは約3 Åであり,炭酸カルシウム1分子層の厚さに相当する。ステップあるいは面の前進速度については,水平方向については溶解時の後退速度よりも速いが,垂直方向については,溶解時の後退速度よりも遅い可能性がある。