JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT05] [EJ] 地球史解読:冥王代から現代まで

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 201B (国際会議場 2F)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)、座長:浅沼 尚(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

16:15 〜 16:30

[BPT05-10] カナダ/古原生代トランスハドソン変動帯に残された堆積盆の層序復元:

*清川 昌一1元村 健人1Bleeker Wouter2Price Dave3 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星部門、2.カナダ地質調査所、3.Hadbay Mine)

キーワード:古原生代、トランスハドソン造山運動、有機物深海堆積物

古原生代は,大気中の酸素濃度上昇事件(Grate Oxidation Event)や,真核生物の台頭が始まり,大陸集合・分裂イベントを伴って地球表層が大きく変化したと言われる (e.g. Holland, 1994, Condie 1997, Kopp et al, 2005).表層の急激な酸化作用から,海底は極度の還元環境に陥り,硫化物に富むユーキシニック海洋が広がるとされている(Lyons et al., 2014).しかし,大陸が安定化するこの時代の深海底の地質学的証拠は原生代の深海底の地層は付加や衝突帯に巻き込まれており,その復元は詳細な地質調査による層序復元が重要になる.我々は古原生代における比較的深い海底の環境変遷を明らかにするために,カナダ・スペリオルクラトンの北縁にあたるトランスハドソン造山帯中に残されるフリンフロン帯およびケープスミス帯に注目した.特に黒色頁岩を含む地層に注目し,地質調査および鉱山が取得する掘削コア記載・サンプリングにより,比較的深い海洋環境における海底状態の復元を試みている.
 フリンフロン帯(Trout Lake (Embury lake) Formationトロウトレイク層):島弧火山活動によって形成されている火山岩帯に沿って分布する砂岩・泥岩からなるタービダイト層からなる。露頭では造山運動の影響により千枚岩化しており、タイト褶曲が面構造に沿って見られる。Hadbay社の掘削コアより、400mの連続試料について現地にて記載し、黒色頁岩部分を中心に200個におよび試料を取得している。褶曲解析により約150mの連続層序が復元できた。薄片観察にて、これらの地層は石英粒子に乏しい火山岩起源の砂岩と泥岩の互層であり、島弧起源から供給された比較的深い堆積盆でできた地層と思われる。現在、砂岩および石英斑岩の年代測定、炭素同位体測定を行っている。
ケープスミス帯(Nuvilik Formation, Povungnituk Group:ヌービリック層,ブブンマタク層群)
ケープスミス帯は19億年前のシート岩脈をもつオフィオライトからなるWatts層群、構造的下位の玄武岩およびコマチアイト溶岩を主体とするChukotat層群、Watts層群の下位に整合的関係で分布する大陸棚起源堆積岩(黒色頁岩)のPovungituk層群からなる。Chukotat層群の最下部に位置するコマチアイト溶岩はサーマルエロージョンによる侵食w起こしており、溶岩最下部はNi-Cu硫化物鉱物鉱床(Relgan鉱山)を形成する(Lesher 2017)。我々はコマチアイト溶岩直下に分布する黒色頁岩(千枚岩)からなるNuvilik層(Povungituk層群)について、Relgan鉱山の許可を得て露頭調査を行なった。また、2箇所のコアKikialik site において鉱山内から掘削した300mコア(468069 core)と Katinniq siteのzone 5-8 地域での表層から800mパイロットコア(718-3485 core)について、詳細な層序記載および試料採取を行った。薄片観察では、黒色頁岩には石英粒子をおよび有機物に富む特徴を持つ。スペリオルクラトンの北縁部にあたる2地域での比較的深い海底堆積物について,層序復元を陸上調査および掘削コア記載を行った。