JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT05] [EJ] 地球史解読:冥王代から現代まで

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)

[BPT05-P16] タイ東北部ファイオムセクションにおける79万年前の東南アジア衝突イベント起源の衝撃変成石英の発見

*多田 賢弘1多田 隆治1Carling Paul2Songtham Wickanet3常 昱1田近 英一1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2. Geography & Environment, University of Southampton、3.Northeastern Research Institute of Petrified Wood and Mineral Resources, Nakhon Ratchasima Rajabhat University)

天体衝突は地球環境に大きな影響を及ぼすことがあるものの、その詳細は不明な点が多い。オーストラリア・アジアテクタイト分布域は、これまでに報告されている4つのテクタイト分布域の内、東南アジア~南極にわたる最も広域でかつ最も年代が若い(0.79Ma)という特徴を持ち、タイ東北部の大規模洪水層やジャワ島サンギランの地層における原人の最終出現との関連が示唆されている (Haines et al., 2004; Hyodo et al., 2011)。
 その衝突地点は、陸上のテクタイトや海底堆積物コア中のマイクロテクタイトの分布からインドシナ半島東部と推定されてはいるものの、衝突クレーターは未発見であり、正確な衝突地点や衝突の規模、様式は明らかにされていない(Glass and Koeberl, 2006など)。イジェクタ層はクレーターに近いほど層厚が厚いため、より正確な衝突地点の推定にはイジェクタ層の分布を明らかにすることが重要である。しかし、イジェクタ層は海低堆積物コアのみで同定され、より衝突地点に近いと考えられるインドシナ半島では同定されていない。
本研究は、インドシナ半島でこの衝突のイジェクタ層を同定することを目的とし、タイ東北部において野外調査を行った。タイ東北部ウボン・ラ-チャタ-ニ-県ファイオムセクションは、Fiske et al. (1996) によって記載され、堆積物中から層状テクタイトが報告されている。本研究では、独自に岩相・層序の記載を行い、シルト基質中に砂岩角礫が含まれることを確認した。また石英粒子を偏光顕微鏡下で観察し、ラメラを持つ石英を見出した。ラメラの方位を、ユニバーサルステージを用いて測定した結果、衝撃変成石英に特徴的な方位が同定されたことから、これらの石英粒子は衝撃変成石英であると考えられる。この衝突に関して陸上の地層中から衝撃変成石英を見出したのは、本研究が初めてである。このことから、Huai Om section にみられる堆積物は、イジェクタ層である可能性が高い。