JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT06] [JJ] 地球生命史

2017年5月20日(土) 09:00 〜 10:30 201B (国際会議場 2F)

コンビーナ:本山 功(山形大学理学部地球環境学科)、生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)、座長:守屋 和佳(早稲田大学 教育・総合科学学術院 地球科学専修)、座長:生形 貴男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、座長:本山 功(山形大学理学部地球環境学科)

09:00 〜 09:15

[BPT06-01] 新たな系統樹の提案“Bacteria-first”:生命誕生場は海ではなく陸

*丸山 茂徳1 (1.東京工業大学地球生命研究所)

キーワード:生命の起源、真正細菌起源、リボソームRNA

プロゲノート、LUCA、コモノートといった単語は、提案者によって少しずつ定義が異なるが、我々の最も古い祖先を指す言葉である。このような最古祖先の生物は現在の地球上には当然存在していないが、最古生命の手がかりはゲノムの中に残されていると多くの生物学者は考えている。現在までの研究で、リボソームRNAの構造を手掛かりに、生命は、古細菌、真正細菌、真核生物の3つに区別されているが、最古の生物はいったい何だったのか?
一般的に、古細菌は真正細菌より古いと考えられている。これは、古細菌が初期地球に似た還元的環境をより好むのに対し、多くの真正細菌は酸化環境に棲息していることが理由である。古細菌の生息場としては、中央海嶺熱水系が示されており、中でも超好熱菌は系統樹の根元に近いところに位置する。水素発生型の還元的熱水系が発見された後は、多くの人が、生命誕生場として中央海嶺熱水系を考えるようになった。
しかし、生命の誕生が現在の生息場で起きたとは限らない。たとえば、陸上の還元場で誕生した生物が、中央海嶺熱水系の還元場に移動したとも考えられる。実際に、冥王代の地球表層(陸上)では自然原子炉間欠泉内部に還元場があり、そこでは還元ガスの濃集が可能だった。つまり、生命誕生場が還元場であったというなら、陸上の還元場が生命誕生場だったと説明することもできる。実際に真正細菌の系統樹の根に近いところでは、好熱性細菌や硫黄細菌が位置することがわかっており、真正細菌の中でも古いものは、超還元環境に生息していたことを意味している。
生命誕生の条件を考えてみると、いくつかの鍵となるのは、淡水の供給、窒素や栄養塩の供給、さらに周期的環境などがあげられる。冥王代の海洋は、重金属元素に富む超酸性かつ超高塩分の化学組成を持つうえに、生物の体に必須である窒素の供給もないことから、生命誕生場とはなりえないことは明らかだ。一方で、冥王代の原初大陸には、これらの条件を満たす場があり、それが自然原子炉間欠泉である。
そこで、ここでは系統樹の新たなモデルとして、”Bacteria-first”モデルを提案したい。このモデルは、陸上の自然原子炉間欠泉で三段階進化によって生命が誕生したとするモデルに基づいている。Petrov(2014)は、リボソームをもとに古細菌は真正細菌よりも若いことを推察したが、これは我々のモデルに矛盾しない。生命の起源研究における次の目標は、おそらくRNAリボソームになるだろう。中央海嶺に棲息する古細菌のRNAリボソームが真正細菌のそれと類似しているか否かは非常に重要なポイントである。そして、古細菌が先か、真正細菌が先かの議論は、今後、レトロポゾン(サイン)法などを適用し遺伝子の平行移動を取り除いた形で進めていく必要がある。