[ACG47-P08] スギ・ヒノキの生理特性データベースの整備から見えてきたもの
キーワード:スギ、ヒノキ、生理特性、データベース、気候変動影響評価、人工林
年平均気温が上昇し、集中豪雨等の極端現象が頻発するなか、林業分野における気候変動の影響評価が強く求められている。特に、日本の人工林の45%を占めるスギは、強い水ストレスを発生しやすく、すでに九州地方を中心に干害が報告されており、こうした影響評価が急務となっている。
高い精度の評価を行うためには、モデルに対象樹種の特性を反映させ、生理生態的にも妥当な森林動態を再現する必要がある。しかし、日本の人工林においてこうした試みは未だなされておらず、モデルに使用することを目的とした造林樹種のパラメータの実測例も少ないのが現状である。一方で、日本では、1960年代から主要造林樹種において、生理的特性や林分構造、物質循環に関する多くの研究がなされ、膨大な知見が蓄積されている。こうした知見を収集し、モデルのパラメータの平均値や変動のレンジ、およびその変動の要因、パラメータ間の定量的な関係を明らかにすることは、影響評価の高精度化に大きく貢献するものである。現在、私たちは日本の主要造林樹種であるスギ・ヒノキを対象に、国内外で発表された文献を広く収集し、生理特性を中心としたデータベースを整備中である。本発表では、現在までに収集された100本以上の論文から得られたデータの一部を紹介する。
近年の携帯型光合成測定装置の普及および葉の形質間シンドロームに関する研究の進展を背景に、現在までに、最も数多くのデータが集まっているのは葉の生理特性(光合成能力、葉の窒素濃度、気孔コンダクタンスなど)や形態(比葉面積:SLA , 葉面積重:LMA)である。生育条件(光、窒素施肥、潅水)、葉位、季節、葉齢が異なる葉で測定された光合成能力の範囲はスギで0.34 – 12.69 µmol m-2 s-1、ヒノキで0.37 – 9.85 µmol m-2 s-1とそれぞれ10倍以上の大きな変異があった。また、同じデータセットにおいて、葉の窒素濃度やSLAの変異はいずれの種でも2 – 4倍程度だったのに対し、気孔コンダクタンスは光合成能力と同等の10倍以上の変異が見られた。さらに、こうしたパラメータの季節変化は将来の気候変動の影響評価に大きく影響する要因だが、これに関してスギ・ヒノキのデータは少ない。本研究では、収集したデータからこれらのパラメータのフェノロジー特性を明らかにすることも試みる。
高い精度の評価を行うためには、モデルに対象樹種の特性を反映させ、生理生態的にも妥当な森林動態を再現する必要がある。しかし、日本の人工林においてこうした試みは未だなされておらず、モデルに使用することを目的とした造林樹種のパラメータの実測例も少ないのが現状である。一方で、日本では、1960年代から主要造林樹種において、生理的特性や林分構造、物質循環に関する多くの研究がなされ、膨大な知見が蓄積されている。こうした知見を収集し、モデルのパラメータの平均値や変動のレンジ、およびその変動の要因、パラメータ間の定量的な関係を明らかにすることは、影響評価の高精度化に大きく貢献するものである。現在、私たちは日本の主要造林樹種であるスギ・ヒノキを対象に、国内外で発表された文献を広く収集し、生理特性を中心としたデータベースを整備中である。本発表では、現在までに収集された100本以上の論文から得られたデータの一部を紹介する。
近年の携帯型光合成測定装置の普及および葉の形質間シンドロームに関する研究の進展を背景に、現在までに、最も数多くのデータが集まっているのは葉の生理特性(光合成能力、葉の窒素濃度、気孔コンダクタンスなど)や形態(比葉面積:SLA , 葉面積重:LMA)である。生育条件(光、窒素施肥、潅水)、葉位、季節、葉齢が異なる葉で測定された光合成能力の範囲はスギで0.34 – 12.69 µmol m-2 s-1、ヒノキで0.37 – 9.85 µmol m-2 s-1とそれぞれ10倍以上の大きな変異があった。また、同じデータセットにおいて、葉の窒素濃度やSLAの変異はいずれの種でも2 – 4倍程度だったのに対し、気孔コンダクタンスは光合成能力と同等の10倍以上の変異が見られた。さらに、こうしたパラメータの季節変化は将来の気候変動の影響評価に大きく影響する要因だが、これに関してスギ・ヒノキのデータは少ない。本研究では、収集したデータからこれらのパラメータのフェノロジー特性を明らかにすることも試みる。