[ACG48-P10] 東グリーンランド深層氷床掘削プロジェクト(EGRIP)キャンプにおける2016年ピット観測から明らかになった近年の堆積量の変動
キーワード:グリーンランド、アイスコア、質量収支、積雪、安定同位体比
グリーンランドにおける気候・氷床変動を明らかにするため,デンマークのコペンハーゲン大学が主導して実施する、東グリーンランド深層氷床掘削プロジェクト(EGRIP計画)が2015年より開始されている。日本は北極域研究推進プロジェクト(Arctic Challenge for Sustainability: ArCS)の一環としてEGRIP計画に参加し、各国と共同研究を行っている.本研究では、近年の年間堆積量、季節毎の堆積量、そして積雪中の様々な化学種・ダストの濃度レベルを把握する目的で、2016年7月にEGRIPキャンプ(75° 37' N,35°59' W)の2地点にて、4.02 m深と3.18 m深のピット観測を実施した。ピット観測では、0.03 m毎に雪氷試料の採取と密度測定を行った。現在、4.02 m深のピットについて、積雪の水安定同位体比(δ18OとδD)の測定が終了している。δ18OとδDの深さプロファイルは明瞭な季節変動を示しており、降雪が年間を通じて定期的に生じていることを示唆した。また季節サイクルの数から、4.02 mの積雪は、2008~2016年までの9年間分の堆積に相当することが分かった。年間堆積量は水当量(water equivalent:w. e.)で99~247 mm w.e.の間で推移し、その平均値は167 mm w.e.であった。北グリーンランドの NEEM(North Greenland Eemian Ice Drilling)キャンプで実施されたピット観測では、2006~2008年の年間堆積量の平均値は176 mm w.e.と報告されており、本研究の結果はそれと同程度であった。また、密度の深さプロファイルは、冬に高密度、夏に低密度になる季節変動を示した。同じような傾向がNEEMキャンプやグリーンランドのSummitにおいて確認されており、これら先行研究で議論されているwind-pack effectがその要因の一つとして考えられた。発表当日は、化学種・ダストの分析結果および、3.18 m深ピットの結果についても発表する。