JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG51] [JJ] 沿岸海洋生態系──1.水循環と陸海相互作用

2017年5月24日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[ACG51-P01] 伊勢湾の表層残差流とクロロフィルa分布への木曽三川流量の影響

永沼 元1林 正能1相木 秀則2、*石坂 丞二2 (1.名古屋大学環境学研究科、2.名古屋大学宇宙地球環境研究所)

キーワード:伊勢湾、表層残査流、HF レーダー、河川流入、クロロフィルa

伊勢湾は本州中央部の太平洋側に位置する半閉鎖性内湾で,同規模の東京湾・大阪湾と比較して非常に大きな淡水流入がある.このような海域では淡水流入によるエスチュアリー循環が卓越するが,淡水流入が水平方向の流動場の変動にどの程度影響するのかは明らかになっていない.そこで本研究は,短波海洋レーダ(High Frequency radar:HFレーダ)を用いて伊勢湾の表層残差流を求め,表層残差流への木曽三川流量の影響を明らかにすることを目的とした.さらに伊勢湾では植物プランクトンの過剰な増加により夏季に赤潮が多く発生しているが,流動場と植物プランクトンとの関連性を取り扱った研究事例はないため,表層残差流のクロロフィルa分布への影響も調べた.
 表層残差流は2010年1月1日から2013年12月31日までの期間で1時間毎にHFレーダで得られた観測値を調和分解し算出した.河川流量は木曾三川(木曽川,長良川,揖斐川)の日平均流量データを使用した.風向風速は伊勢湾シーバース(湾奥),中部国際空港,第四号灯浮標(湾央)に設置されている風向風速計の1時間毎のデータを使用した.クロロフィルa分布はAqua衛星に搭載されている海色センサMODISのデータから算出した.本研究では季節変動を把握し,赤潮が多く発生する夏季(6月~8月)の変動に焦点を当て解析した.
 木曽三川の月平均流量は冬季には小さいが,夏季に大きくなり,7月には最大の1015.6 m3 s-1となった.流量は降水・降雪量の季節変動を反映し,特に夏季の流量増加は梅雨や台風の影響を示唆する.伊勢湾の月平均表層残差流は1月から5月,9月から12月は全体的に北から南へ流れており,湾西部より湾東部で強い流れを示した.一方,夏季の7月には流速が湾東部より湾西部で大きくなり,8月には湾央で反時計回りの循環が現れた.月平均クロロフィルa濃度は流量が少ない冬季に低いが,流量が増加する夏季に高くなり,月平均値最大の7月には10 mg m-3以上のクロロフィルaの高い水塊が湾奥から三重県沿岸に分布した.これらの季節変動から,夏季には表層残差流やクロロフィルa分布に特徴的な変化が確認され,木曽三川流量による影響が大きいと考えられた.
 そこで夏季の表層残差流の流向を決定する要因を調べるために,湾奥の北緯34.823度,東経136.724度地点の日平均表層残差流流向と日平均流量を比較した.その結果,流量が年平均の3倍(1500 m3 s-1)以上のとき残差流は西寄りの流れになった.一方,流量が1500 m3 s-1未満のとき残差流は全方位へばらついた.大流量時には残差流はコリオリ力を受けた河川水により,西へ偏向したと考えられる.さらに流向と風向風速を比較し,残差流は平均風速(5.7 m s-1)以上の風の影響を強く受けていることが明らかになった.このとき流向は風向からみて右にずれており,流向と風向との偏角は約30°であった.
次にクロロフィルa分布の変動と移流を調べるために,日毎のクロロフィルa分布と日平均残差流と日平均流量との比較を行った.1500 m3 s-1以上の流量後には湾奥の表層残差流は西寄りの流れになり,10 mg m-3以上のクロロフィルaの高い水塊は湾奥から三重県沿岸に分布した.一方,1500 m3 s-1未満の流量後には表層残差流は東向きあるいは知多半島沿岸の南下流になり,クロロフィルaの高い水塊は湾奥または湾奥から知多半島沿岸に分布した.したがって,クロロフィルaの高い水塊は大流量後に生じる湾奥の西寄りの表層残差流によって湾奥から三重県沿岸へ,小流量後には湾奥の東寄りまたは知多半島沿岸の南下流によって湾奥から知多半島沿岸へ移流された可能性が示された.