JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW34] [EJ] 水循環・水環境

2017年5月22日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[AHW34-P12] 水の微量元素組成による地域特性化の試み

*平岡 達也1 (1.東京理科大学)

キーワード:水、微量元素、ICP-MS / AES

食品の表示偽装が問題視されている近年、その原料産地を科学的に特定する分析技術が求められている。こうした背景から当研究室では、微量元素組成や同位体比を指標とした食品・農作物の産地判別法の開発を進めており、昨年度からは平成20年に環境省が選定した「平成の名水百選1)」の河川水および湧水を対象とした研究を開始した。水は食品の生産工程、および野菜や農作物の栽培において不可欠であることから、水の微量元素情報は産地判別のための重要な指標となる。水は岩石との相互作用で元素が溶出すると考えられ、地質などの地球科学的情報と関連付けた水の地域特性化が期待される。
日本全国40地点(河川16地点、湧水24地点)にて、超純水および10%硝酸で予め洗浄したポリエチレン製容器を用いて現地で採水を行い、3%硝酸を加え約4℃の冷暗所で保存した。孔径0.45 µmメンブランフィルターによるろ過により沈殿物を除去し、分析試料とした。軽元素(Na, Mg, K, Ca, Si)の定量には誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-AES:SPS3520UV)を用いて、その他の微量元素(Li, Al, V, Cr, Mn, Co, Ni, Cu, Zn, Rb, Sr, Ba, 希土類元素:REE)の定量には四重極型誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MSS:Agilent 7500c)を用いた。定量下限を下回るREEはノビアスキレートを用いた濃縮を行った。分析には、内標準元素として115Inを添加し、検量線法を用いることで、20元素以上の濃度の定量を行った。またICP-MSの分析においては、一部の元素についてコリジョンリアクションセルを用いた干渉除去を行った。
まず検出された各微量元素の由来について考察を行った。Liについては、福島県の荒川、群馬県の神流川源流、山梨県の金峰山・瑞牆山源流で採水された河川水試料で高濃度を示した。この結果は、これらの河川源流では母岩がLiを多く含む花崗岩地質であるためと推察される。なお、他の河川水、湧水試料においては、上流が花崗岩地質ではないところでは、高濃度のLiは検出されなかった。また、富山県の弓の清水は多くのREEを高濃度で含んでいた。弓の清水の付近は堆積岩が広く分布しており、堆積岩中に含まれる燐灰石が風化した際、REEのリン酸塩として溶出した2)と考えられる。長野県のまつもと城下町湧水群は、分析した40試料の中でMg, Ca濃度が最も高かった。Mgは源流である美ヶ原高原の付近に堆積する凝灰岩、Caは石灰岩の影響を受けているとの指摘がある3)。また、高濃度のVが源兵衛川、湧玉池・神田川、十日市場・夏狩湧水群で検出された。いずれも静岡県、山梨県であり、玄武岩地質を反映していると考えられる。
以上より、湧水や河川水中の微量元素組成はその付近の地質を強く反映していることが示唆された。今後は試料の拡充を進め、さらなる地域特性化と食品の起源分析への応用を目指す。
1) 藪崎志穂ら:地下水学会誌, 51, 127-139 (2008).
2) S.J. Köhler et al.:Chemical Geology 222, 168-182 (2005).
3) 藪崎志穂:地球環境研究, 13, 33-41 (2011).