JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS26] [JJ] 海洋生物資源保全のための海洋生物多様性変動研究

2017年5月21日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[AOS26-P05] 炭素14をトレーサーとしたマイワシの回遊履歴解析

*宮入 陽介1横山 祐典1渡邊 千夏子2渡邊 良朗1永田 俊1 (1.東京大学大気海洋研究所、2.国立研究開発法人 水産研究・教育機構 中央水産研究所  )

キーワード:炭素14、同位体分析、海洋生態系、マイワシ

海水中の溶存無機全炭酸(DIC)の放射性性炭素濃度は、全球規模の海洋循環によって古い炭素を含んだ海水が供給される地域では、地域間変動が大きいことが知られている。日本近海には親潮と黒潮が存在しているが、親潮は深層海水の湧昇の影響により、低い放射性炭素濃度を示す。それに対して黒潮は世界の中低緯度表層海水平均値に近い高い値を示す。そのため、放射性炭素濃度は海水の起源情報を示すと考えられる。海水中の溶存無機全炭酸は植物プランクトンを始めとする食物連鎖により、海洋生物に取り込まれる。そのため、この黒潮と親潮の海水中の14C濃度差は、日本近海の魚類の生態学的情報の有効なトレーサーとなると考えられる。
 日本の太平洋側に生息するマイワシは、A:冬春季に黒潮域で生まれた後に初夏に移行域を北上して夏季に親潮域で生息する群、B:冬春季に黒潮域で生まれその後も黒潮系暖水域内に留まる群、の大きく2群に分けられると考えられている。八戸周辺で秋季に漁獲されるマイワシ群はA群とB群が混在すると考えられる。しかしながらこれらを個別に識別することは困難であった。
本研究では八戸周辺で漁獲されたマイワシ当歳魚の14C濃度を分析行った結果、漁獲されたマイワシの来歴を14C濃度差によって識別できる可能性が高いことが明らかになった。このことはマイワシ資源に対する親潮域の生物生産力の貢献度の評価法として14C分析が応用可能であることを示唆している。