JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS30] [JJ] 沿岸域の海洋循環・物質循環と生物の応答動態

2017年5月20日(土) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[AOS30-P05] 豊後水道の密度場が急潮・底入り潮に与える影響

*齋藤 類1武岡 英隆2 (1.愛媛大学沿岸環境科学研究センター、2.愛媛大学南予水産研究センター)

キーワード:底入り潮、急潮、豊後水道、黒潮

九州と四国の間に位置する豊後水道では、流入する2つの密度流(急潮と底入り潮)が発生すること知られている(Takeoka et al., 2000)。急潮は上層への黒潮系暖水の間欠的流入で、底入り潮は陸棚斜面底層を起源とする冷水の下層への間欠的流入である。急潮は黒潮前線上の暖水舌が四国南西岸に衝突することで発生し、鉛直混合が弱まる加熱期と小潮時に水道中部まで流入する。底入り潮は小潮時と黒潮接岸時に流入が確認されているが (兼田ら, 2002; Kaneda et al., 2002)、その物理過程は良く分かっていない。近年では2013年11月中旬から12月中旬に非常に強い底入り潮が水道南部沿岸(愛媛県福浦湾)で5回確認され、下層水温が繰り返し大きく低下していた(最大: -4.0 °C day-1)。本研究ではこれらの底入り潮を愛媛大学と愛媛漁連の多層水温データを用いて解析した。さらに、愛媛県水産研究センターの定期観測データから算出した水道内部での密度場が豊後水道における流入現象に与える影響を評価した。

2013年晩秋から初冬にかけての豊後水道沿岸の鉛直水温断面を見ると、豊後水道南方の沖の島では全層(深さ45 mまで)を暖水と冷水が交互に通過する現象が見られ、豊後水道最南端の福浦ではこの冷水通過時に強い底入り潮が発生した。また、福浦上層では沖の島での暖水通過後に急潮と認められる水温上昇が見られたが、上昇量は沖の島より抑制されていた。さらに、豊後水道中部へは底入り潮のみが弱まりつつ伝わり、急潮はほとんど伝わっていなかった。このように、底入り潮のみ豊後水道内部へ伝わっていた原因を考察するため、豊後水道の密度場を調べた。その結果、2013年11月の密度は上層では南部の密度が北部より大きく、北部から南部に流出傾向であったため、急潮は抑制される傾向であった。下層では南部の密度が北部よりも大きく、南部から北部へ流入傾向であったため、底入り潮は流入しやすい傾向であった。過去のデータを見ると、10月から11月は南部の上層での高塩分化により、急潮が流入し難い傾向になる年があることがわかった。さらに、12月から翌年4月は北部の季節的な冷却により底入り潮が流入し難い傾向が続く年が多いこともわかった。Kaneda et al., 2002の観測では、1995年12月~1996年4月まで急潮のみしか発生しない時期が見られていたが、これはこのような豊後水道内部の密度構造によるものと考えられる。