[AOS30-P07] 釜石湾における湾口防波堤の破壊と再建にともなう海洋環境変化
キーワード:海水交換、湾口防波堤、釜石湾、東日本大震
沿岸に位置する釜石湾では、1960年のチリ津波の被害を受けて、世界最大水深(63 m)の湾口防波堤が建設された。ところが、2011年の東日本大震災に伴う巨大津波によって、湾口防波堤は壊滅的に破壊された。しかし、東日本大震災後に再び復旧工事が行われ、現在、それは概ね完成に近づいている。そこで、筆者らは、そうした湾口防波堤の破壊と再建に伴って、釜石湾内の海洋環境がどのように変化したのかを調べるために、CTDO(塩分・水温・深度・酸素)船舶観測を実施した。その結果、以下のことが分かった。
東日本大震災の前(2009年)は、湾口防波堤は湾内の海況を静穏化する一方で、海洋環境(水質)を悪化させる効果も有していた。すなわち、震災前の秋季(成層期)には、湾口防波堤が湾内と湾外の海水交換を妨げたため、防波堤内側の底層部に貧酸素水が形成されていた。他方、防波堤が破壊されていた震災直後の秋季(2011年)は、湾内と湾外の海水交換が活発化し、そうした貧酸素水の発生が緩和されていた。しかし、防波堤の再建が終了しつつある現在(2015年以降)は、再び貧酸素水が出現し始め、湾内下層の環境は悪化しつつある。
東日本大震災の前(2009年)は、湾口防波堤は湾内の海況を静穏化する一方で、海洋環境(水質)を悪化させる効果も有していた。すなわち、震災前の秋季(成層期)には、湾口防波堤が湾内と湾外の海水交換を妨げたため、防波堤内側の底層部に貧酸素水が形成されていた。他方、防波堤が破壊されていた震災直後の秋季(2011年)は、湾内と湾外の海水交換が活発化し、そうした貧酸素水の発生が緩和されていた。しかし、防波堤の再建が終了しつつある現在(2015年以降)は、再び貧酸素水が出現し始め、湾内下層の環境は悪化しつつある。