[AOS30-P08] 東日本大震災以降6年間の三陸沿岸大槌湾および主要流入河川における栄養塩環境の変化
キーワード:2011年東北地方太平洋沖地震、津波、三陸沿岸域、栄養塩環境
2011年3月11日に発生した大地震に伴う大津波の襲来により,三陸沿岸の内湾域では海岸地形や堆積物に対する物理的な攪乱が生じたほか,藻場や干潟の生物群集の流出,養殖筏をはじめとする漁業施設や下水処理施設などの都市機能の損壊など,湾内の物質循環系を取り巻く要因に変化が生じた.これら悲劇的な震災の発生以降,我々は六年間にわたって被害の大きかった岩手県のリアス海岸の中ほどにある大槌湾を対象に栄養塩類の分布に対する大津波の影響を検討してきた。大槌湾の水柱内では2011年の夏季に顕著な亜硝酸塩とケイ酸の顕著な蓄積が見られたが、続く11月から翌年の2012年3月までの期間に顕著なリン酸塩の蓄積が見られ,全無機態窒素(TIN)とリン酸塩のモル比(TIN/P比)は震災前の約10から6程度にまで減少した.これらの低TIN/P比は陸起源有機物や堆積物からの相対的にリンの寄与が高い栄養塩類の放出による可能性が考えられる.一方でそれ以降の2014年3月までの期間では,鉛直混合が強まる時期にTIN/P比の平均値は逆に震災前よりも高い12-13へと上昇した.2014年5月以降の混合期においても2016年の初頭までの段階で依然として震災前よりも高い状態が続いていた.発表では2016年度の結果も加えて議論をする予定である。