[AOS30-P09] 新島和田浜海岸漂着ゴミの1次元岸沖方向拡散係数と砕波帯内における拡散係数の比較
キーワード:海岸漂着ゴミ、拡散係数、標識再捕獲実験、中立粒子実験
近年、海岸に漂着したプラスチックゴミによる環境汚染が深刻な問題となっている。また、大型のプラスチックゴミによる環境汚染に加えて、数mmのサイズに微細化したプラスチックゴミの問題も懸念されている。海岸に漂着したプラスチックゴミは熱や紫外線の影響を受けて急激に劣化するため、海岸に漂着している時間が長いほど微細化する傾向にある。そこで、プラスチックゴミ微細化のプロセスを理解するためには、プラスチックゴミが海岸に漂着してから再漂流するまでの時間、すなわち、滞留時間を理解する必要がある。先行研究として、ゴミの総量と拡散係数を用いて再漂流過程を拡散方程式で表現する方法が提案されている。すなわち、拡散過程によってゴミが海洋へと再漂流するフラックスを計算する。ここで、海岸漂着ゴミの拡散係数の推定が必要となるが、標識再捕獲実験(Mark-recapture experiment)を実施することで見積もられる滞留時間から推定できる。しかし、この実験には多くの労力と時間を必要とするため、これを世界中の海岸で実施することは事実上不可能である。そこで、沿岸域における物理場の拡散係数と、海岸漂着ゴミの拡散係数を関連付ける方法が提案されている。本研究では、東京都新島村の北西に位置する和田浜海岸における標識再捕獲実験と、中立粒子実験を用いた両拡散係数の推定を行った。そして、両者を比較することで、それらを関連付ける係数を推定した。標識再捕獲実験では、海岸の後浜と前浜に事前に集めた200個のプラスチックフロートを2015年9月17日に配置し、2016年10月23日まで観測を行った。約2か月間隔で海岸調査を行い、散布したプラスチックフロートの残余数を測定した。残余数の時間変化を指数関数に近似して、プラスチックフロートの滞留時間を見積もったところ、249日となった。そして、滞留時間と海岸幅から見積もられた拡散係数は4.18×10-5m2/sとなった。さらに、砕波帯内における拡散係数を求めるために、砕波帯を撮影したビデオ画像を利用して中立粒子実験を行い、砕波帯内における粒子の滞留時間から拡散係数を見積もった。本実験で外力となる流速データは、巻き上げられた砂が沖へと輸送される過程を撮影した動画に画像粒子速度測定法を適用して計測されたものである。本講演では各実験の詳細と、プラスチックフロートの拡散係数と砕波帯内における拡散係数を関連付ける係数について詳しく述べる。