JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE]Eveningポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-AO 宇宙生物学・生命起源

[B-AO01] [EE] Astrobiology: Origins, Evolution, Distribution of Life

2017年5月24日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[BAO01-P01] 2段式軽ガス銃を用いた衝突実験におけるアミノ酸分子合成

*関口 俊介1三重野 哲1阿部 仁美2長谷川 直3柴田 裕実4癸生川 陽子2小林 憲正2 (1.静岡大学、2.横浜国立大学、3.宇宙航空研究開発機構、4.大阪大学)

キーワード:タイタン、衝突反応、アミノ酸

宇宙空間ではさまざまな有機物が非生物的に合成されている。これは星間分子雲からの有機物の検出によって確認されている。また、マーチソン隕石のような炭素質隕石中に有機物が確認されている。衝突反応によって合成された有機物は、惑星の表面や地下に堆積したり、宇宙へ拡散していく可能性がある。原始地球と類似している、土星の衛星、タイタンが注目されている。タイタンへの小惑星の衝突模擬実験を行った先行研究では、様々な炭素クラスターが合成されていることが確認されている。しかし小惑星衝突を模擬した実験におけるアミノ酸合成はまだ不明確である。そこで本研究では、2段式軽ガス銃による衝突実験を行い、窒素の豊富な大気圏子環境下で合成された試料内に、アミノ酸のような有機分子が含まれているか確認することを目的とした。実験はJAXA/ISASが保有する2段式軽ガス銃を使用した。弾は直径7.1 mmのポリカーボネイト弾、または直径3.2 mmのSUS弾を使用し、約6.5 km/sで衝突させた。与圧室がターゲットチャンバー内に設置されており、与圧室の端部にターゲットを固定した。本実験では鉄ターゲット、水+鉄ターゲット、水+ヘキサン+鉄ターゲット、ソーリン+鉄ターゲットが使用された。衝突実験後、与圧室内に堆積した試料を注意深く回収した。回収した試料を超純水50 mlで、約8時間100℃の還流操作を行った。その後、不純物を取り除くためにろ過を行い、ろ液の熱濃縮を行ったものを分析した。また還流後、加水分解処理した試料の分析も行った。さらに炭素質試料を加水分解し、抽出してからろ過を行う形の分析も行った。試料の分析にはUV/VIS検出器を使った液体高速クロマトグラフィ分析を用いた。還流処理のみを行った試料では、標準アミノ酸の信号と比較することにより、主にグリシンとアラニンの存在を示唆するピークが見られた。加水分解処理を行った試料の分析では、グリシン、アラニンに加えてセリンやロイシンの存在を示唆するピークも見られた。炭素質試料を加水分解した試料は、より多くの鋭いピークが見られた。水とヘキサンと鉄ターゲットを用いた衝突実験により合成された炭素すすの試料1g中にはグリシンやアラニン、セリン、ロイシンが約10-6~10-4 g含まれていることが見積もられた。炭素質試料の量などに多少のばらつきがあり、それによって数値が変わってしまうため、より多くのデータを使うことが好ましい。また加水分解処理を行うことにより、試料に含まれる大きな有機分子の連鎖が外れ、還流処理試料では検出されなかったピークが検出されるようになったと考えられる。本実験での加水分解は、試料の量が多すぎると完全に反応が行われない可能性があり、少なすぎると定量分析の際に、数値がばらついてしまう可能性があると考えられる。窒素ガスが充填された中で衝突が起きると、高温プルームが形成される。その高温プルーム中でC2分子とN2分子が反応し、CNが形成され、それがアミノ酸合成を引き起こしていると考えられる。
参照: K. Okochi,T. Mieno et al.: Orig. life. Evol. Biosph (2015) 45: 195-205