[BCG09-P02] ペルム紀中期末上村イベント再訪:岩井崎石灰岩最上部の炭素同位体層序とOMZ拡大
キーワード:大量絶滅、ペルム紀、キャピタン世、炭素同位体比
ペルム紀中期/後期(G-L)境界直前のCapitanianにおきた海棲動物の主要な絶滅について、当時の低緯度地域で堆積した北米テキサス、南中国の蓬莱灘、また日本の上村・赤坂セクションにおいて詳細な層序が検討されてきた。当時の海水準低下や熱帯動物群の選択的絶滅はグローバル寒冷化を示唆する。低緯度ながらも比較的高緯度の陸棚浅海で堆積した南部北上帯のペルム系岩井崎石灰岩は、生物礁形成およびその後の礁崩壊を記録しており、大型フズリナLepidolinaの産出と極めて低いSr同位体比に基づき、その上部はすべてCapitanianに対比される。同石灰岩の最上部40 mの区間の掘削試料について、無機・有機炭素同位体比の経年変化を分析した結果、温暖浅海に適応した動物群の絶滅期間に、海水が最大で約+5.8 ‰に至る高いδ13Ccarb値を、また有機物が約-22.5‰という高いδ13Corg値を持っていたことが判明した。この結果は、無機炭素同位体比のみで提案された「上村事件」が、当時の陸棚浅海で高い光合成生産と効率的な有機物除去を記録していたことを意味している。とくにΔ13C値が30 ‰に及ぶ大きな値となることから、当時の海洋では、通常の光合成による炭素固定に加えて、還元条件下で活性化するメタン細菌による同位体分別の寄与が推定される。クロアチアのBrusaneセクションとロシア沿海州のSenkina Shapkaセクションの同年代浅海成石灰岩からも、岩井崎石灰岩上部と同様の高いΔ13Cを検出した。おそらくCapitanianの超海洋およびその周辺では、酸素極小帯(OMZ)が大きく拡大し、その結果ペルム紀中期末における浅海生物の大量絶滅がおきた可能性がある。