JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG09] [EJ] 顕生代生物多様性の変遷:絶滅と多様化

2017年5月23日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[BCG09-P06] 数値計算を用いたペルム紀三畳紀境界での炭素循環変動

*田畑 美幸1飛田 知世1藤崎 渉2戎崎 俊一3磯崎 行雄1 (1.東京大学 総合文化研究科、2.東京工業大学 地球惑星科学専攻、3.理化学研究所)

キーワード:GL境界、炭素循環、生物絶滅

顕生代において知られている主要な5 つの大量絶滅事件の中で最大規模の絶滅が古生代ペルム紀末に起きた。この事件はペルム紀中期Guadalupian世末(G-L境界)と同後期Lopingian世末(P-T境界)での2回の絶滅の複合したもので、多く海成無脊椎動物が絶滅した (Jin et al., 1994; Stanley and Yang, 1994; Isozaki & Ota, 2001)。先に起きたG-L境界事件(約2 億6000 万年前)において古生代型動物の多様性が初めて大きく減少しており、絶滅の原因となった海洋環境変化を考察するにはG-L境界直前からの地質記録を探る必要がある。本研究では、絶滅時の生態系変化を解明するため、海洋中の炭素循環注目した検証を行う。
これまでにG-L境界からP-T境界にかけての炭酸塩岩層の無機および有機炭素同位体比の分析が世界中の多くのセクションでなされた結果、海水の同位体プロファイルとしておおよそ以下のパタンが明らかにされた(Isozaki et al., 2007a,b; Korte et al., 2005a,b; Payne et al., 2008)。すなわちG-L境界の直前に上村事件(Kamura event)と名付けられた無機炭素同位体比が+6‰を超える顕著な正シフトがおきた後、G-L境界で0‰近くまで減少した。その後Lopingianでは再び正の値が継続したが、再びPTB境界で約+3‰から-2‰近くまで急激に減少し、トリアス紀最初期から中期前半まで、きわめて大幅にかつ頻繁に変動した。一方、有機炭素同位体比の測定例は少ないものの、深海堆積物などではG-L境界前後で-30〜-28‰という炭酸塩岩に対して極めて低い値が測定されたNishikane et al., 2014)。さらに最近になって、陸棚浅海のGuadalupian石灰岩(南部北上帯の岩井崎石灰岩)からもG-L境界直前の上村事件の記録が得られ、無機と有機炭素同位体比の間に極端に大きな差が認められた(飛田ほか講演)。
その大きな差が生じた原因について、計算モデルを用いて、炭素循環の変化について考察を行った。 海洋中に無機炭素リザーバーと有機炭素リザーバーがあるとし、それぞれ大きさに比例してやりとりが行われると仮定した。その結果、G-L境界直前には生物絶滅が徐々に進行あした間に、海洋中に溶存する有機物量が変化した可能性が示唆される。おそらくGuadalupian世最後のCapitanian期には、グローバルな規模で、超海洋全体の中層に発達した酸素極小帯(OMZ)が大幅に拡大して陸棚に達し、その結果、浅海動物の絶滅を導き、かつ異常な同位体比の記録を残したと推定される。