[G04-P09] 高校生が体験する自然科学研究の発展の過程
キーワード:地学部、修正、議論
2014年4月に本校に赴任して、すぐに地学部を立ち上げた。創部当初から31名の部員を集め、その後次第に増加して、現在では50名をこえる部員を擁する文化部最大級の部活動となっている。①身近な自然現象をテーマにして、特別な機器を用いずに研究して論文にまとめ、専門的な成果を得ること、②得られた成果を、行政や地元の住民に提供すること、③得られた成果を、移動実験教室を開催して地元の小学生に伝えること、を基本方針として積極的な活動を展開している。地学部という名称であるが、自然科学系の研究であれば特に分野を問わない。現在の研究班は5つあり、その内訳は、物理1、生物2、地学1、社会工学1である。指導者は筆者のみである。創部当初から文部科学省認定大会や専門学会等で全国上位の評価と成績をおさめている。
地学分野は創部当初から3年間、同一のテーマで継続的に研究をおこなっている。3年連続で、日本学生科学賞中央大会進出、神奈川大学全国高校生理科科学論文大賞優秀賞や日本地質学会最優秀賞受賞など、地学部を牽引する研究班である。同一のテーマで継続研究をおこなうことによって、生徒は思いがけず、自然科学研究の発展の過程を実体験する好機に恵まれた。
(1)2014年度の研究成果
毎年のように氾濫する1級河川加古川の洪水被害に遭った生徒たちが、その原因を解明したいと考え、東西20km×南北18kmにわたる広範囲を調査して94個の試料を採取し、そのすべてを薄片にして偏光顕微鏡で観察するほか、モード組成や帯磁率の測定や全岩化学組成の分析をおこなった。これにより、兵庫県南部の地質図と模式断面図を作成して、加古川の氾濫の原因を明らかにした。
(2)2015年度の研究成果
2014年度の研究が全国上位入賞を果たした直後のハイキングで、その研究のもととなった考え方を覆す証拠を発見した。生徒の動揺は大きく、「いまさら間違っていたとはいえない」と混乱したが、筆者の「修正できるのは君たちしかいない」の言葉に奮起し、自らの研究成果を否定する観察を始めた。兵庫県を瀬戸内海から日本海まで、東西20km×南北160kmにわたって縦断する再調査をおこない、146試料を採取して分析をおこなった。岩石鉱物学的な研究手法によって、修正版の地質図と形成過程の模式図を作成し、兵庫県の形成過程を示した。この研究活動は高い評価を受け、生徒は安堵した。
(3)2016年度の研究成果
2015年度の研究論文に対して、専門研究者からいくつかの異論を唱える論文が発表された。生徒は、いよいよ高校生の研究のレベルをこえて、専門家と議論するステージに入ったという実感を得たに違いない。これらの異論に応えるべく、新たに構造地質学的な視点で東西60km×南北90kmの範囲を集中的に調査するほか、103個の試料を岩石鉱物学的に分析し、自らの研究成果が正しいことを示す論文を発表した。これら一連の研究は、自然科学が、議論によって誤りを修正しながら発展することを実体験するものであった。
地学分野は創部当初から3年間、同一のテーマで継続的に研究をおこなっている。3年連続で、日本学生科学賞中央大会進出、神奈川大学全国高校生理科科学論文大賞優秀賞や日本地質学会最優秀賞受賞など、地学部を牽引する研究班である。同一のテーマで継続研究をおこなうことによって、生徒は思いがけず、自然科学研究の発展の過程を実体験する好機に恵まれた。
(1)2014年度の研究成果
毎年のように氾濫する1級河川加古川の洪水被害に遭った生徒たちが、その原因を解明したいと考え、東西20km×南北18kmにわたる広範囲を調査して94個の試料を採取し、そのすべてを薄片にして偏光顕微鏡で観察するほか、モード組成や帯磁率の測定や全岩化学組成の分析をおこなった。これにより、兵庫県南部の地質図と模式断面図を作成して、加古川の氾濫の原因を明らかにした。
(2)2015年度の研究成果
2014年度の研究が全国上位入賞を果たした直後のハイキングで、その研究のもととなった考え方を覆す証拠を発見した。生徒の動揺は大きく、「いまさら間違っていたとはいえない」と混乱したが、筆者の「修正できるのは君たちしかいない」の言葉に奮起し、自らの研究成果を否定する観察を始めた。兵庫県を瀬戸内海から日本海まで、東西20km×南北160kmにわたって縦断する再調査をおこない、146試料を採取して分析をおこなった。岩石鉱物学的な研究手法によって、修正版の地質図と形成過程の模式図を作成し、兵庫県の形成過程を示した。この研究活動は高い評価を受け、生徒は安堵した。
(3)2016年度の研究成果
2015年度の研究論文に対して、専門研究者からいくつかの異論を唱える論文が発表された。生徒は、いよいよ高校生の研究のレベルをこえて、専門家と議論するステージに入ったという実感を得たに違いない。これらの異論に応えるべく、新たに構造地質学的な視点で東西60km×南北90kmの範囲を集中的に調査するほか、103個の試料を岩石鉱物学的に分析し、自らの研究成果が正しいことを示す論文を発表した。これら一連の研究は、自然科学が、議論によって誤りを修正しながら発展することを実体験するものであった。