JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG33] [JJ] 原子力発電所の基準地震動: 理学と工学の両面から考える

2017年5月21日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[HCG33-P03] あらゆる可能性を考慮した震源断層の特定は可能か?

*橋本 学1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:震源断層、地殻変動、原子力施設

近年の高分解能合成開口レーダーを使って地殻変動研究を行ってきたが、そこで学んだことは、震源断層は極めて複雑である、ということである。例えば、2010年から続くニュージーランドの一連の地震の断層運動は、その最たるものであろう。また、2010年4月の福島・いわきの地震も複数の平行する断層面が滑ったことが明らかである。また、地表地震断層が現れるマグニチュードの下限とされる6.4という数値も、実利用には危うい数値と言わざるを得ない。2011年3月19日の茨城県北部の地震(M6.1)では、SAR干渉画像には明瞭な不連続が認められており、地殻変動のパターンから考えて、地表まで破壊が及んだと考えるのが妥当である。さらに、この地域では2016年12月28日にM6.3の地震が発生し、ほぼ同じパターンの地殻変動が観測され、不連続も同様に認められた。わずか6年以内に狭い領域で同規模の地震が繰り返したことになる。このような筆者の経験から考えると、事前に限られた数の震源断層を特定して、地震動を計算することの妥当性が疑わしい。

これらの観察事実を、極めて例外的な事例として片付けることは簡単である。おそらくこれまでの地震科学は、そのようにして多くの事例に共通する普遍性を求め、洗練することで進歩してきた。すなわち、確率分布で言えば平均値周辺の事例を集中的に研究して法則性を見いだしてきたのである。しかし、確率のロングテールを考慮せざるを得ない、原子力施設等の立地に関しては、それでよいのだろうか?一方で、上記のような極めて「例外的な」地震や、未だ起きていないタイプの地震をどこまで考慮すべきなのだろうか?残念ながら、筆者は答えを持っていない。諸賢の議論に期待する。