[HCG37-P01] 熊本地震に伴う地表地震断層と断層地形との関係
★招待講演
キーワード:熊本地震、地表地震断層、活断層
2016年4月に発生した熊本地震に伴い,長さ30kmをこえる地表地震断層が,これまで活断層として報告されていた布田川-日奈久断層帯(九州の活構造,1989;中田・今泉,2002ほか)に沿って発生した.しかしながら,過去の活動の累積である布田川-日奈久断層帯の断層地形は,集落や森林下を通過するため,空中写真による地形判読では,これまで十分に明らかになっていなかった.本発表では,詳細な地表地震断層のトレースをもとに,2mデジタル標高モデル(DEM)を活用して,既存の活断層地形を明らかにし,地表地震断層と断層地形の関係を検討した.
地表地震断層の分布とその特徴
熊本地方における一連の地震活動では,4月14日にMj6.5の地震(深さ11km)が起きた28時間後に,阪神淡路大震災と同程度であるMj7.3の地震(深さ12km)が続けて起きた.
「本震」にあたる16日の地震に伴う地表地震断層は,既存の活断層である日奈久断層北部から布田川断層や出ノ口断層に沿って,ほぼ連続的に生じ,その長さは約31kmである.
多くの地点で右横ずれ変位が認められ,最大右ずれ変位量は益城町堂園で約2.25mである.布田川断層沿いの上下変位は,南部では南西側上がり,北部では北東側上がりとなる.上下変位量は最大1mである.
西原村から阿蘇外輪山付近では,布田川断層から約2km南東に,布田川断層と平行に延びる出ノ口断層があり,出ノ口断層に沿って一部左横ずれ変位を伴う北西落ちの正断層性変位(最大2m)が認められた.全体として,直線的な右横ずれセンスの断層に並走して北西落ちの正断層センスの断層が認められる.
北東-南西走向の右横ずれ変位をもつ地表地震断層が雁行する箇所で,北西-南東走向の短い断層が認められ,トレースに沿って左ずれ変位が認められた.主たる断層に対する共役な断層である.
空中写真判読に基づいて活断層のトレースを認定した「活断層詳細デジタルマップ」,都市圏活断層図「熊本」で活断層を図示していない区間で地表地震断層が一部現れた.特に益城町北部では,変動地形学的なセンスからは想定できない位置に断層トレースが出現した.
14日の地震では日奈久断層北部(白旗-高木区間)や布田川断層南部で地表地震断層が数cm程度の変位が生じた.同じトレース上で14日の地震に伴う変位より大きい変位が,16日の地震で生じている.
今回のずれの範囲や変位量からみて,日奈久断層北部から布田川断層,出ノ口断層の断層地形を形成してきた断層運動が今回生じたと見なせる.
布田川-日奈久断層の断層地形
地表地震断層上では,過去の活動の累積である,断層変位地形が多数で認められた.これまで変位基準が明らかになっていなかった布田川断層沿いでは,明確な河谷の右横ずれ変位が連続的に認められる.一方,正断層性の縦ずれ変位も同様に認められ,繰り返しこのトレースで断層変位が生じていることが認められた.
例えば,西原村大峰では,約12万年前に噴出した単成火山である大峰火山(石坂ほか,1992)の山体を横切って,地表地震断層が認められ,右ずれ最大140cm,南側上がり78cmの変位が認められた(図1).地表地震断層上の,火砕流台地の河谷や大峰火山の山体では, 70〜150mの右横ずれ変位が認められる.また大峰火山の山体は約80m南上がりの垂直変位を受けている.火山の形成年代(約12万年前)と累積変位量(150m)を考えると,右横ずれ変位の平均変位速度は1.25m/千年となる.単純に,今回の地震に伴う変位量(140cm)が過去の活動でも繰り返し同じように生じているとすると,100回を超える活動が必要となり,およそ1200年に1回の変位が生じることが予測される.これらの推測値は,今後詳細に検討されるべきであろう.
発表では,日奈久-布田川断層全体を通して累積的な断層変位地形を検討し,地表地震断層と断層地形の関係について議論する予定である.
地表地震断層の分布とその特徴
熊本地方における一連の地震活動では,4月14日にMj6.5の地震(深さ11km)が起きた28時間後に,阪神淡路大震災と同程度であるMj7.3の地震(深さ12km)が続けて起きた.
「本震」にあたる16日の地震に伴う地表地震断層は,既存の活断層である日奈久断層北部から布田川断層や出ノ口断層に沿って,ほぼ連続的に生じ,その長さは約31kmである.
多くの地点で右横ずれ変位が認められ,最大右ずれ変位量は益城町堂園で約2.25mである.布田川断層沿いの上下変位は,南部では南西側上がり,北部では北東側上がりとなる.上下変位量は最大1mである.
西原村から阿蘇外輪山付近では,布田川断層から約2km南東に,布田川断層と平行に延びる出ノ口断層があり,出ノ口断層に沿って一部左横ずれ変位を伴う北西落ちの正断層性変位(最大2m)が認められた.全体として,直線的な右横ずれセンスの断層に並走して北西落ちの正断層センスの断層が認められる.
北東-南西走向の右横ずれ変位をもつ地表地震断層が雁行する箇所で,北西-南東走向の短い断層が認められ,トレースに沿って左ずれ変位が認められた.主たる断層に対する共役な断層である.
空中写真判読に基づいて活断層のトレースを認定した「活断層詳細デジタルマップ」,都市圏活断層図「熊本」で活断層を図示していない区間で地表地震断層が一部現れた.特に益城町北部では,変動地形学的なセンスからは想定できない位置に断層トレースが出現した.
14日の地震では日奈久断層北部(白旗-高木区間)や布田川断層南部で地表地震断層が数cm程度の変位が生じた.同じトレース上で14日の地震に伴う変位より大きい変位が,16日の地震で生じている.
今回のずれの範囲や変位量からみて,日奈久断層北部から布田川断層,出ノ口断層の断層地形を形成してきた断層運動が今回生じたと見なせる.
布田川-日奈久断層の断層地形
地表地震断層上では,過去の活動の累積である,断層変位地形が多数で認められた.これまで変位基準が明らかになっていなかった布田川断層沿いでは,明確な河谷の右横ずれ変位が連続的に認められる.一方,正断層性の縦ずれ変位も同様に認められ,繰り返しこのトレースで断層変位が生じていることが認められた.
例えば,西原村大峰では,約12万年前に噴出した単成火山である大峰火山(石坂ほか,1992)の山体を横切って,地表地震断層が認められ,右ずれ最大140cm,南側上がり78cmの変位が認められた(図1).地表地震断層上の,火砕流台地の河谷や大峰火山の山体では, 70〜150mの右横ずれ変位が認められる.また大峰火山の山体は約80m南上がりの垂直変位を受けている.火山の形成年代(約12万年前)と累積変位量(150m)を考えると,右横ずれ変位の平均変位速度は1.25m/千年となる.単純に,今回の地震に伴う変位量(140cm)が過去の活動でも繰り返し同じように生じているとすると,100回を超える活動が必要となり,およそ1200年に1回の変位が生じることが予測される.これらの推測値は,今後詳細に検討されるべきであろう.
発表では,日奈久-布田川断層全体を通して累積的な断層変位地形を検討し,地表地震断層と断層地形の関係について議論する予定である.