JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS15] [EJ] 海底地すべりとその関連現象

2017年5月23日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[HDS15-P04] 津波の原因である海底地すべりを制御する

*丸山 茂徳1戎崎 俊一2 (1.東京工業大学地球生命研究所、2.理研)

キーワード:津波災害制御、海底地すべり

津波は巨大地震に伴って発生することが多い。そのため、津波のほとんど(82%)は地震による海底の地殻変動が原因で起こる。ところが、海底地滑りが原因で起こる津波は6%程度にとどまると見積もられてきた。しかし、江戸時代の1792年に起こった「島原大変肥後迷惑」の例でも明らかなように、地すべりは甚大な津波を引き起こす。島原の例は、陸上で起こった地滑りが海中まで続いた例であるが、津波発生メカニズムは水中で起こる海底地すべりでも同じと考えてよい。しかし、このようなメカニズムがなかなか受け入れられなかった要因は、海底の地すべりによって津波が発生するプロセスを直接観察することが困難であることが最大の原因だろう。
 Tappin et al. 2014は、2011年の東北地方太平洋沖地震で観測された詳細な津波波形データをうまく説明するためには、地震による第一波源の他に、第二波源も必要であることを見出した。第二波源は,北緯39.3度,東経144度あたり(震源の北北東約150kmの三陸海岸沖)の海溝陸側斜面に位置しており、その付近の海底水深を地震前後で詳細に比較した結果によると、数十メートルにおよぶ海底面の変動が約40km×20kmにわたってみられた。それは大規模な海底地滑りが地震の直後にここで起こったことと整合的である。この第二波源は、地震発生後25-35分のちに、鋭い波高(8m)のピークを作りだし、これが地形効果でさらに増幅され、最終的に40mを超え三陸沿岸を襲う巨大津波となった。
​ このような巨大津波を防ぐ最善の方法は、地滑りの原因となる海底の重力不安定堆積物を予防的に除去し、津波を元から絶ってしまうことである。地震で誘発されて、同時多発的に地滑りが起これば大きな災害を生むが、毎年計画的に地すべりの原因物質を除去しておけば、津波を元から絶つことができる。最も優先的に作業を開始すべきは熊野灘沖である。ここは、西南日本太平洋沿岸において、近い将来発生する可能性が最も高い東南海地震の震源地と考えられる。加えて、濃尾三川(木曽川・揖斐川・長良川)起源の伊勢湾の土砂と、日本一の雨量を誇る紀伊山脈から供給される大量の土砂が、熊野灘海盆の東南縁に集中的に堆積している。つまり、南海トラフ陸側斜面において海底地滑りがいつ起こってもおかしくない重力不安定場を作り出しているからである。