JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS16] [JJ] 津波とその予測

2017年5月24日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[HDS16-P05] 三次元海洋・津波・粒子追跡結合シミュレーションに基づいた巨大津波による底泥巻き上げと重金属輸送の推定

*中田 聡史1林 美鶴2越村 俊一3 (1.神戸大学海事科学研究科、2.神戸大学内海域環境教育研究センター、3.東北大学災害科学国際研究所)

キーワード:巨大津波、重金属、粒子追跡シミュレーション、南海トラフ巨大地震、大阪湾

南海トラフ巨大地震はマグニチュード8~9程度で,将来30年以内に70%の確率で発生するとされており、巨大津波が発生し海洋環境も甚大な被害を受ける可能性が高い。例えば、津波によって海底では底質の巻き上げが発生し、底質中の重金属等の有害物質や赤潮の原因となる植物プランクトンのシストが海水中に放出される可能性がある。特に、大都市に面した沿岸海域、例えば大阪湾奥部においては、底質中にシストや重金属が高濃度で存在しており,津波によってこれらも巻き上がると、水環境が富栄養化・重金属汚染される可能性も考えられる。そこで本研究では,内閣府が新想定(平成24年)した南海トラフ津波断層モデルに基づいて三次元津波・海洋結合シミュレーションを実施し、底泥重金属の代表としての亜鉛がどのようにして巻き上げられ、移流・拡散されるのかを粒子追跡シミュレーションに基づいて調べた。巻き上げの指標となる無次元せん断応力を計算し、海域周辺において津波後に海水中の亜鉛濃度がどの程度高くなるのかを推定した。粒子シミュレーションから次の結果が得られた。大阪湾の東湾では巻き上げが発生し、湾奥ではそれが顕著となる“ホットスポット”が形成され、そこから海洋中に放出された底泥・重金属(亜鉛)は、主に河口循環によって一旦海洋上層へと鉛直的に運ばれた後、沖向きへと輸送される。亜鉛を含んだ海水は、潮流や風によって湾内に広範囲に広がっていき輸送される。亜鉛が粒子に吸着せず再堆積しない場合は、亜鉛は紀淡海峡および紀伊水道を通過して、次第に南向きに輸送されると考えられる。その結果、津波襲来後のホットスポットは、海底泥内の高い亜鉛濃度が低下し、底質環境および生態系は改善される可能性が示唆された。