[HQR05-P04] 三陸海岸中部・津軽石平野における完新統の堆積過程と地殻変動
キーワード:Holocene, Sanriku coast, crustal movement
三陸海岸では,地形学的に求めた長期的な地殻変動と測地学的に求めた短期的な地殻変動の向きが異なることが従来から知られていた(池田ほか,2012)。近年,三陸海岸南部において,沖積層の解析に基づいて,三陸海岸南部における完新世の地殻変動が,東北地方太平洋沖地震時や地震前と同様に沈降傾向である可能性が示されている(丹羽ほか,2014など)。しかし,このような検討がされた地域は三陸海岸でも南部の一部地域のみであり,三陸海岸の隆起・沈降要因を解読する上で完新世の地殻変動データが十分とは言えない。そこで本研究では,三陸海岸中部に位置する津軽石平野で得られた3本のボーリングコアを用いて平野の堆積環境および,完新世における地殻変動傾向を推定する。
3本のコアは全て,下位から沖積層基底礫層に対応する河川堆積物,氾濫原あるいはエスチュアリー堆積物と解釈される砂泥互層,内湾堆積物と解釈される内湾潮下帯に生息する貝化石を含む泥層,デルタ堆積物と解釈される上方粗粒化を示す砂泥層,および現世の河川および氾濫原堆積物から構成される.これらのうち,最も上流側で得られたコア試料では,上方粗粒化を示すデルタフロント堆積物の上位に上方細粒化を示す砂泥層が認められ,この砂泥層中には干潟砂泥底に生息する現地性のオオノガイが産出した.これらのことから,デルタフロント堆積物の上位に見られる上方細粒化する砂泥層は潮間帯で堆積したと考えられ,その分布高度(現海面下約12 m)は,堆積当時(約7500 cal BP)の海面高度を近似すると考えられる.
当該地域における8000~7000年前以降の相対的海水準は,地域的な地殻変動を考慮しない場合,現海面下−5 mよりは高い(Okuno et al., 2014).すなわち,上記の現海面下約−12 mに位置する潮間帯堆積物の分布高度から,調査地域の地殻変動が完新世中期以降沈降傾向にあることが推定される。三陸海岸南部の既存研究(丹羽ほか,2014など)も踏まえると,少なくとも津軽石平野付近まで完新世の沈降傾向が追跡できる可能性が示唆される。
3本のコアは全て,下位から沖積層基底礫層に対応する河川堆積物,氾濫原あるいはエスチュアリー堆積物と解釈される砂泥互層,内湾堆積物と解釈される内湾潮下帯に生息する貝化石を含む泥層,デルタ堆積物と解釈される上方粗粒化を示す砂泥層,および現世の河川および氾濫原堆積物から構成される.これらのうち,最も上流側で得られたコア試料では,上方粗粒化を示すデルタフロント堆積物の上位に上方細粒化を示す砂泥層が認められ,この砂泥層中には干潟砂泥底に生息する現地性のオオノガイが産出した.これらのことから,デルタフロント堆積物の上位に見られる上方細粒化する砂泥層は潮間帯で堆積したと考えられ,その分布高度(現海面下約12 m)は,堆積当時(約7500 cal BP)の海面高度を近似すると考えられる.
当該地域における8000~7000年前以降の相対的海水準は,地域的な地殻変動を考慮しない場合,現海面下−5 mよりは高い(Okuno et al., 2014).すなわち,上記の現海面下約−12 mに位置する潮間帯堆積物の分布高度から,調査地域の地殻変動が完新世中期以降沈降傾向にあることが推定される。三陸海岸南部の既存研究(丹羽ほか,2014など)も踏まえると,少なくとも津軽石平野付近まで完新世の沈降傾向が追跡できる可能性が示唆される。