[HQR05-P05] オールコアの解析に基づく会津盆地の浅部地下地質構造の検討
キーワード:会津盆地、第四紀、更新統、地下地質構造、テフラ、花粉化石
1.はじめに
会津盆地は東北日本弧の奥羽脊梁山脈西方に発達する内陸盆地群のひとつであり,盆地の東西をそれぞれ会津盆地西縁断層帯と会津盆地東縁断層帯に限られる(活断層研究会,1991;福島県,2002;産総研,2007).会津盆地の地下構造については近年,鈴木ほか(2013,2016)が会津坂下で掘削したオールコア(AB-12-2,標高179.1m,深度99.5m)解析に基づき,会津盆地西部地下における中期更新世以降のテフラ層序と西縁断層の活動性について考察している.しかし,盆地全体の第四系地質構造や両断層帯の活動史については,地下の資料が乏しいため(鈴木ほか,1977)充分に明らかでない.
産業技術総合研究所では,地中熱利用促進のための地中熱ポテンシャル評価研究の一環として,会津盆地における浅部地下地質構造の調査を進めている.これまでに会津盆地東部の2地点においてボーリングを実施し(GS-SOK-1,標高175.99m,深度130m:塩川;GS-AZU-1,標高208.36m,深度100m:会津若松),それらの層序について報告した(石原ほか,2015,2016).本発表では,これらのコアとAB-12-2コアの層序対比を基に会津盆地の浅部地下地質構造について考察する.
2.各コアの層序
GS-SOK-1:深度81.1~81.7mより,砂子原逆瀬川テフラ(Sn-SK:220ka;鈴木ほか,2004)を検出した(石原ほか,2015).本コアの地域花粉化石群集帯は,石原ほか(2016)の報告に深度10.7~20.5mの花粉分析結果を加え,下位よりSOK-Iから-XII帯まで再区分した.SOK-I帯(深度111.1~126.7m)では,下部に第三紀型植物分類群のMetasequoia,Keteleeria,Carya等を低率に産出する.以上の結果と14C年代値(石原ほか,2015)に基づき,深度6.0mまでを完新統,6.0~45.0mを上部更新統,45.0~110.5mを中部更新統,110.5~130.0mを下部更新統に区分した.
GS-AZU-1:深度13.35~13.38mに姶良Tn(AT,29-30ka;町田,2011),30.25~30.30mに阿蘇4(Aso-4,87ka;青木ほか,2008),34.1~35.1mに沼沢芝原(Nm-SB,110ka;鈴木ほか,2004),52.35~52.40mに砂子原松ノ下(Sn-MT,180-260ka;鈴木ほか,2004)の各テフラを検出した.また,深度70.5~76.3mに白河火砕流堆積物群の勝方火砕流堆積物(吉田・高橋,1991;黒川ほか,2008)が見いだされた.以上の結果と14C年代値に基づき,深度5.0mまでを完新統,5.0~36.5mを上部完新統,36.5~52.5mを中部更新統,52.5~100.0mを下部更新統に区分した.
AB-12-2:鈴木ほか(2016)に基づくと,深度約8.5mまで完新統,約8.5~44.5mは上部更新統,約44.5m~99.5mは中部更新統に相当する.本コアは下部更新統に達していない.
3.会津盆地の浅部地下地質構造
GS-AZU-1のテフラ深度から完新統~上部更新統の平均堆積速度を算出すると,地表~AT間で0.45m/kyr,AT~Nm-SB間で0.26~0.27m/kyrとなる.一方,AB-12-2の完新統~上部更新統の平均堆積速度は,地表~大山倉吉テフラ(DKP :55-66ka;鈴木ほか,2016)間で0.46~0.55m/kyr,DKP~田頭テフラ(TG,129ka;青木ほか,2008)間で0.19~0.23m/kyrである(鈴木ほか,2016).両地点の後期更新世以降の堆積速度に大きな差は見られない.盆地床の堆積速度が東西の断層帯の活動度に依存すると仮定すると,後期更新世以降の東縁,西縁断層帯の平均上下変位速度は同程度と考えられる.堆積速度の変化する時期が各コア地点で異なることについては,断層の活動時期或いは堆積環境の局所的変化を反映している可能性がある.
中部更新統と下部更新統の境界深度は,会津若松で深度50~60m程度,塩川で110~120m程度,熱塩で50~60m程度(東北通産局,1999)にある.下部更新統は,盆地の南部・北部から中央部へ傾いて分布する構造が推定される.一方,盆地西部の会津坂下では深度100mでも下部更新統には到達しない(鈴木ほか,2016).深井戸資料を参考にすると,会津坂下付近の下部更新統は少なくとも地表下150m以深に分布している可能性がある.東西方向でみると,中部更新統と下部更新統の境界深度は西側へ傾く構造が読み取れる.このことは,西縁断層帯と東縁断層帯の活動史を明らかにするうえでも重要な知見となる.
会津盆地は東北日本弧の奥羽脊梁山脈西方に発達する内陸盆地群のひとつであり,盆地の東西をそれぞれ会津盆地西縁断層帯と会津盆地東縁断層帯に限られる(活断層研究会,1991;福島県,2002;産総研,2007).会津盆地の地下構造については近年,鈴木ほか(2013,2016)が会津坂下で掘削したオールコア(AB-12-2,標高179.1m,深度99.5m)解析に基づき,会津盆地西部地下における中期更新世以降のテフラ層序と西縁断層の活動性について考察している.しかし,盆地全体の第四系地質構造や両断層帯の活動史については,地下の資料が乏しいため(鈴木ほか,1977)充分に明らかでない.
産業技術総合研究所では,地中熱利用促進のための地中熱ポテンシャル評価研究の一環として,会津盆地における浅部地下地質構造の調査を進めている.これまでに会津盆地東部の2地点においてボーリングを実施し(GS-SOK-1,標高175.99m,深度130m:塩川;GS-AZU-1,標高208.36m,深度100m:会津若松),それらの層序について報告した(石原ほか,2015,2016).本発表では,これらのコアとAB-12-2コアの層序対比を基に会津盆地の浅部地下地質構造について考察する.
2.各コアの層序
GS-SOK-1:深度81.1~81.7mより,砂子原逆瀬川テフラ(Sn-SK:220ka;鈴木ほか,2004)を検出した(石原ほか,2015).本コアの地域花粉化石群集帯は,石原ほか(2016)の報告に深度10.7~20.5mの花粉分析結果を加え,下位よりSOK-Iから-XII帯まで再区分した.SOK-I帯(深度111.1~126.7m)では,下部に第三紀型植物分類群のMetasequoia,Keteleeria,Carya等を低率に産出する.以上の結果と14C年代値(石原ほか,2015)に基づき,深度6.0mまでを完新統,6.0~45.0mを上部更新統,45.0~110.5mを中部更新統,110.5~130.0mを下部更新統に区分した.
GS-AZU-1:深度13.35~13.38mに姶良Tn(AT,29-30ka;町田,2011),30.25~30.30mに阿蘇4(Aso-4,87ka;青木ほか,2008),34.1~35.1mに沼沢芝原(Nm-SB,110ka;鈴木ほか,2004),52.35~52.40mに砂子原松ノ下(Sn-MT,180-260ka;鈴木ほか,2004)の各テフラを検出した.また,深度70.5~76.3mに白河火砕流堆積物群の勝方火砕流堆積物(吉田・高橋,1991;黒川ほか,2008)が見いだされた.以上の結果と14C年代値に基づき,深度5.0mまでを完新統,5.0~36.5mを上部完新統,36.5~52.5mを中部更新統,52.5~100.0mを下部更新統に区分した.
AB-12-2:鈴木ほか(2016)に基づくと,深度約8.5mまで完新統,約8.5~44.5mは上部更新統,約44.5m~99.5mは中部更新統に相当する.本コアは下部更新統に達していない.
3.会津盆地の浅部地下地質構造
GS-AZU-1のテフラ深度から完新統~上部更新統の平均堆積速度を算出すると,地表~AT間で0.45m/kyr,AT~Nm-SB間で0.26~0.27m/kyrとなる.一方,AB-12-2の完新統~上部更新統の平均堆積速度は,地表~大山倉吉テフラ(DKP :55-66ka;鈴木ほか,2016)間で0.46~0.55m/kyr,DKP~田頭テフラ(TG,129ka;青木ほか,2008)間で0.19~0.23m/kyrである(鈴木ほか,2016).両地点の後期更新世以降の堆積速度に大きな差は見られない.盆地床の堆積速度が東西の断層帯の活動度に依存すると仮定すると,後期更新世以降の東縁,西縁断層帯の平均上下変位速度は同程度と考えられる.堆積速度の変化する時期が各コア地点で異なることについては,断層の活動時期或いは堆積環境の局所的変化を反映している可能性がある.
中部更新統と下部更新統の境界深度は,会津若松で深度50~60m程度,塩川で110~120m程度,熱塩で50~60m程度(東北通産局,1999)にある.下部更新統は,盆地の南部・北部から中央部へ傾いて分布する構造が推定される.一方,盆地西部の会津坂下では深度100mでも下部更新統には到達しない(鈴木ほか,2016).深井戸資料を参考にすると,会津坂下付近の下部更新統は少なくとも地表下150m以深に分布している可能性がある.東西方向でみると,中部更新統と下部更新統の境界深度は西側へ傾く構造が読み取れる.このことは,西縁断層帯と東縁断層帯の活動史を明らかにするうえでも重要な知見となる.