JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] [JJ] ヒト-環境系の時系列ダイナミクス

2017年5月25日(木) 15:30 〜 16:45 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[HQR05-P09] 北海道北部,頓別平野における樽前火山起源のテフラ

*横田 彰宏1近藤 玲介2重野 聖之1金丸 龍夫3右代 啓視4冨士田 裕子5 (1.明治コンサルタント株式会社、2.皇學館大学、3.日本大学、4.北海道博物館、5.北海道大学)

キーワード:火山灰、砂丘、樽前火山、頓別平野、完新世

●はじめに
 北海道南西部に位置する樽前火山は,完新世初頭から火山活動を行う活火山である.樽前火山を起源とする完新世の火山灰は,樽前a火山灰(Ta-a;西暦1739年),樽前b(Ta-b;西暦1667年),樽前c2(Ta-c2;約2.5ka),樽前d(Ta-d;約9.0ka)などが知られ(瀬尾ほか,1968;曽屋・佐藤,1980;古川・中川,2010 など),指標火山灰として北海道各地に分布する(町田・新井,2003).これらの火山灰の中でもTa-aのみが北海道北部においても見出され,完新世の堆積物の鍵層の一つとして知られる.本発表では,北海道北部の砂堤列において見出された2層の火山灰が,樽前火山起源の火山灰に対比された結果について報告する.
 研究対象地域である北海道北部オホーツク海側頓別平野周辺においては,比較的大規模な河川である頓別川の下流域に中期更新世以降に形成された海成・河成段丘と,沖積低地や砂丘列などが分布する(小疇ほか,2003).頓別平野の砂丘上には多くの遺跡が分布していることが知られており(浜頓別町教育委員会,2014),過去の人間活動と地史の関係を解明するためにも砂丘などの沿岸部に分布する地形発達史や層序を明らかにする必要がある.しかし,北海道北部では,これまでTa-aを除けば完新世火山灰や年代資料が発見されず,砂丘などの発達史について不明な点が多い.
 本研究は,頓別平野沿岸部の複数地点において堆積物の記載と各種分析を行い火山灰の対比を試みた.頓別川右岸のブタウス遺跡周辺における最前列の砂堤の露頭では,海成砂礫層とこれを覆う腐植質な風成砂よりそれぞれ細粒なガラス質火山灰が認められた.これらの2層の火山灰は,火山ガラスの形態分類,温度変化型屈折率測定装置を用いた火山ガラスの屈折率測定,エネルギー分散型X線分析装置を用いた火山ガラスの組成分析をおこなうことにより,北海道に分布する複数の完新世火山灰の模式試料との対比を検討した.

●結果とまとめ
 頓別平野南東部の砂丘列では,同一露頭で2層の細粒なガラス質火山灰が時間間隙を伴い堆積しているという層位関係の記載結果や,鉱物の屈折率,岩石学的特徴(TiO2-K2Oの関係)の分析の結果から,それぞれTa-a,およびTa-c2に対比される可能性が高いことが明らかとなった.Ta-c2は,これまで北海道北部における報告はなく,その降下範囲の再検討の必要性が示唆されるとともに,北海道北部の砂堤列をはじめとした完新世の地形発達や堆積史を考える上で有力な鍵層となりうる.

引用文献
 浜頓別町教育委員会(2014)浜頓別町教育委員会.223p.;古川・中川(2010)産総研地質調査総合センター,7p.;町田・新井(2003)東京大学出版会,336p.;小疇ほか(2003)東京大学出版会,359p.;瀬尾ほか(1968)北海道農業試験場土性調査報告.;曽屋・佐藤(1980)地質調査所,92p.