JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] [JJ] ヒト-環境系の時系列ダイナミクス

2017年5月25日(木) 15:30 〜 16:45 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[HQR05-P14] 2016年熊本地震で甚大な被害を受けた益城町市街地の地下地質

*中澤 努1坂田 健太郎1長 郁夫1佐藤 善輝1卜部 厚志2星住 英夫1吉見 雅行1 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター、2.新潟大学災害・復興科学研究所)

キーワード:地下地質、益城町市街地、2016年熊本地震

熊本県益城町は2016年熊本地震で甚大な建物倒壊被害を被った.益城町の市街地はAso-4火砕流堆積物が形成する台地の縁辺斜面に位置する.このうち被害が集中したのは台地縁辺斜面の下半部(裾部)である.益城町中心部から熊本市東区にかけて,東西に少なくとも3 kmにわたって斜面裾部に帯状に被害が集中した.演者らは,この被害集中帯及びその近傍の3地点でのボーリング(掘進長55〜75 m;吉見ほか,2016)で得られたコア試料・ペネ試料の検討を行うとともに,被害集中帯に直交する複数の測線で微動アレイ調査を実施した.今回これらの調査結果について報告する.
 ボーリングコア試料・ペネ試料の検討により,調査地域の深度約70 m以浅の地層は,下位より,スコリア及び火山灰からなる層(Aso-3火砕流堆積物),凝灰質泥層,軽石及び火山灰からなる層(Aso-4火砕流堆積物),凝灰質泥層,ローム層,盛土により構成されることが明らかになった.このうち表層に近い凝灰質泥層(Aso-4火砕流堆積物の上位)は含水率が高く,極めて軟質であることを特徴とする.調査地域は全般的に地下水位が浅いため,表層に近い凝灰質泥層が特に軟質となった可能性がある.また,被害集中帯とそれ以外の台地域で大きく異なるのは主に軽石や火山灰からなるAso-4火砕流堆積物の層厚である.被害の大きかった台地縁辺斜面下半部に相当する地域では,斜面上半部に比べAso-4火砕流堆積物の層厚が大きい.このような地層の空間的な広がりを微動アレイ調査によって推定した.その結果,吉見ほか(2016)のPS検層結果に基づけば主にAso-4火砕流堆積物に相当する,S波速度がおよそ300 m/s以下の地層が,台地縁辺斜面下半部で厚くなるとともに,その基底が斜面上半部から下半部に向けてステップ状に標高を下げていくと解釈可能なS波速度断面が得られた.このような地層の分布形態が被害の偏在の要因となっている可能性がある.
 一方,台地縁の南側に接する沖積低地では被害がさほど顕著ではなかったことが知られる.微動アレイ調査に基づけば,沖積低地には台地斜面よりもS波速度の小さい地層が厚く分布することが推定される.沖積低地で建物被害が小さかったことの要因についてはさらなる検討が必要である.

文献:吉見ほか(2016)日本活断層学会2016年度秋季学術大会講演予稿集,P-17.