[HSC07-P02] 水月湖堆積物を用いた洪水災害史長期定量復元とその手法
キーワード:Lake Suigetsu, varved sediment, flood, earthquake, Holocene
災害現象の観測は、その発生メカニズムの検討および規模・頻度の将来予測のために必要不可欠だが、最近100年程度の記録しか得ることができない。その一方で、近年懸念が高まってきている大規模な災害は、一般に発生頻度がその規模に応じて低くなるため、観測や歴史記録だけでは十分なデータを得ることが難しい。そこで、観測記録を超える過去における災害の記録媒体として堆積物記録に着目し、洪水災害の長期記録を復元することを試みた。災害が発生すると、通常時とは異なる物質が大量に堆積場に流入し、「イベント堆積物(イベント層)」として保存され、その厚さや砕屑物流入フラックスは災害規模の指標となり得る。本研究では、対象地域である福井県水月湖の堆積物を用いて、観測と堆積物の比較に基づいて中部日本地域の強雨・洪水記録定量復元手法を確立した。まず、堆積物と観測記録との比較を行うため、年縞が保存されている表層堆積物を用いて、高精度な年代モデルを確立して、イベント層と周辺地域の洪水史の対比を行った。さらに、過去7000年の堆積物の主要元素組成分析およびその統計解析によって、堆積物構成要素(とくに河川水流量に対して敏感に応答する砕屑物)のフラックスを復元した。その結果、イベント層の堆積年代が記録されている洪水年代と一致し、さらにイベント層の厚さが洪水時の総雨量に比例することがわかった。また、河川起源細粒砕屑物のフラックスが強雨の頻度に比例することも明らかになった。今回行った手法を他の堆積場に応用することで、観測記録を大きく超える時間スケールにおける定量的な災害史の時空間変動復元が可能になる。
本発表に関連して、本研究で得られた災害復元記録における洪水・地震の区別やローカルな堆積環境変動との比較をM-IS23セッションで、完新世後期の災害史復元結果と広域気候変動との関係についてM-IS06セッションで発表する。
本発表に関連して、本研究で得られた災害復元記録における洪水・地震の区別やローカルな堆積環境変動との比較をM-IS23セッションで、完新世後期の災害史復元結果と広域気候変動との関係についてM-IS06セッションで発表する。