JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE]Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] [EE] GEOSCIENTIFIC APPLICATIONS OF HIGH-DEFINITION TOPOGRAPHY AND GEOPHYSICAL MEASUREMENTS

2017年5月23日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[HTT19-P03] 遠隔調査船と高性能魚群探知機を利用した水底地形図の作成および底質マッピング

★招待講演

*山崎 新太郎1田房 友典2岩崎 俊佑2平松 雅宏1 (1.北見工業大学、2.弓削商船高等専門学校)

キーワード:fish finder, sonar, bathymetry, remote investigation, landslide, Lake Ashinoko

小水域と浅水域における音響調査は地球科学の諸分野や防災研究で重要である共に高い潜在的価値が見込まれる.例えば,氷河湖や地すべり閉塞湖における湛水量の推定は突発的な決壊洪水災害の予測としての有用であり,火口湖の水底のイメージングは水中の不可視の火山活動を観察する手段として有用である.しかしそのような調査はそのコスト,可搬性,有人観測の高い危険性があるが故に困難であった.筆者らは近年,軽量,低コストの最近の魚群探知機を利用して浅い水域の調査を行っている.今回,筆者らは前述の小水域・浅水域を調査する手段として同上の魚群探知機を備えた無人調査船システムについて開発を行ったのでそれを本講演において発表する.

開発したシステムは田房ほか(2013)を参考に,一般市販品や低価格電子デバイス,無償ソフトウェアで構成されている.無人船船体はエレキモーターと呼ばれる電気式の船外機と木製またはプラスチック製フロートを用い,双胴船構造になるようにした.その理由は,実験によって,このタイプの小型船においては,双胴船形態が波のある状況でも安定であったためである.エレキモーターは12Vで駆動し,リモコン制御機構を持つものである.この制御機構にZigBee無線デバイスをセットすることでその制御距離を約1kmまで拡張した.GNSS受信機をこの船体に設置し,その位置情報を同様の無線伝送デバイスで地上の操縦者に送信した.位置情報とGNSS情報から計算したスピード,船首方向をリアルタイムでPCディスプレイに表示させた.

筆者らは本装置を使用した調査として神奈川県芦ノ湖における研究を紹介する.湖の北部では湖底に多数の水没した木が発見されていた.そのうちのいくつかは立ったままであり,「逆杉」と呼ばれている.大木ら(1988)はこれらの水中林は地すべりによりもたらされたと推定していた.筆者らはもし地すべりによって水中林がもたらされたのであれば,水中林の周辺の地形とその底質が湖のその他の場所と異なると仮定し,その地域を開発したシステムにより調査した.その結果,得られた等深線図では,水中林の周辺に他の湖底とは異なる特徴的な高まりがあることが示された.また,得られた相対的な表面の硬さ値および表面粗度値の分布は水中林の底質が湖の大部分と異なることが示された.これは水中林が地すべりによって運ばれたという考えと矛盾しない.

<文献>
Yamasaki, S., Kamai, T., 2015. A novel method of surveying submerged landslide ruins: Case study of the Nebukawa landslide in Japan. Engineering Geology, 186, 28-33.
田房友典・澤村幸樹・向井利夫・葛目幸一,2013.小型自律走査艇の開発とメコン川の川底三次元地形図の作成 (<特集> 航法システム研究会) Navigation,日本航海学会誌,186, 15-23.
大木靖衛・袴田和夫・伊東博,1988.箱根の逆さ杉.神奈川新聞社, 180p.