JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT25] [JJ] 地理情報システムと地図・空間表現

2017年5月20日(土) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[HTT25-P04] 新興・再興感染症の空間的拡散:日本におけるインフルエンザA/H1N1pdm09、2009-2010の事例

*荒堀 智彦1 (1.首都大学東京大学院都市環境科学研究科博士後期課程)

キーワード:空間的拡散、インフルエンザA/H1N1pdm09型、日本、地理情報システム(GIS)

インフルエンザは,地球上で最も広く分布するウイルス性の人獣共通感染症である。日本においては,毎年11月から3月を中心に季節性の流行が発生する。A型・B型・C型の3種類のウイルスのうち,A型インフルエンザは新種のウイルスによるパンデミックを引き起こすことがある。
本研究では,日本におけるインフルエンザA/H1N1pdm09の空間的拡散過程を考察する。これまで様々な分野からパンデミックに関する研究が行われているが,空間的側面から日本における詳細な拡散過程を考察したものは少ない。とくに世界規模でのインフルエンザの流行の拡散過程を詳細に分析するためには,空間スケールに応じた地図化が求められる。本研究では,グローバルスケール,ナショナルスケール,ローカルスケールのGISによる地図化を通じて,フェーズごとの拡散過程をマルチスケールで分析する。
データは,パンデミックが発生した2009年から2010年のシーズンにおける感染症サーベイランスデータを使用した。グローバルスケール,ナショナルスケールでは,日本の国立感染症研究所の患者データ,ローカルスケールでは,学校施設における集団発生データを用いた。ローカルスケールの事例地域は,近畿地方南部に位置する和歌山県である。この地域は,京阪神大都市圏に含まれる北部と,紀伊半島の山間部において過疎化が進む南部という地域特性を持った地域である。
グローバルスケール,ナショナルスケールにおける地図化から,2009年5月に,米国,東南アジア諸国を中心に2つの経路による患者の入国が明らかとなった。ひとつは,関西国際空港から近畿地方,もう一つは成田空港から関東地方と東北地方への経路である。日本国内における経路は,地方間の結びつきと関係していることが示唆された。
和歌山県内における流行のピークは2009年11月であり,近畿地方における初確認から和歌山県におけるピークまで6か月ある。集団発生の増加は2009年9月から始まった。閉鎖施設の分布から,大都市圏に含まれる北部から南部へ徐々に拡散したことが明らかとなった。
これらの結果は,新興・再興型のインフルエンザだけでなく,日常的な防疫に対する基礎情報を提供できるものであると考えられる。